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被爆国の役割 どう果たす 核禁条約発効4年 オブザーバー参加 首相は慎重な姿勢

 核兵器の開発や保有、使用を全面的に禁じる核兵器禁止条約の発効から22日で丸4年。石破茂首相は3月に米国である条約の第3回締約国会議へのオブザーバー参加を検討しているが、最近は慎重な姿勢も目立つ。被爆者の願う参加へと踏み出せるかどうか。判断の時が近づく。

 首相は今月、日本被団協と広島、長崎の両市長からオブザーバー参加の要請を相次いで受けた。だが、いずれにも態度を明確にせず、北朝鮮や中国の脅威を強調した。核廃絶を求めた被団協には核攻撃をシェルターで防御する意義を説くなど「国防族」の一面をのぞかせ、議論はかみ合わなかった。

 オブザーバー参加の検討そのものは歴代政権にはない動きだ。参考にするのは、日本と同じく米国の「核の傘」の下で過去にオブザーバー参加したドイツだという。ただドイツは2022年の初回締約国会議で核抑止が重要とし、「条約には加われない」と主張した。

 日本政府はこれまで核兵器保有国が一切加わっていないことを条約と距離を置く理由に挙げてきた。条約参加の検討状況に関し、林芳正官房長官は今月17日の記者会見で「唯一の戦争被爆国としての歴史的責務をどのように果たすべきか、という難しい課題の一環」と立場を明示しなかった。

 かつて核軍縮に逆行する言動も取ったトランプ米大統領の就任により「日本の条約参加は遠のく」との悲観論も野党からは聞こえる。日本被団協代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(92)は「核使用は現実の危機としてある。オブザーバー参加は最低条件で、廃絶議論の先頭に立つことこそが被爆国の責務だ」と訴える。(樋口浩二)

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や製造、使用などを違法とする初の国際条約。2020年に批准国が50カ国・地域に達し、21年1月22日に発効した。前文で被爆者の苦しみや核兵器廃絶への努力に触れる。オーストリアやメキシコなど核兵器を持たない国々が制定を主導。これまで94カ国・地域が署名、73カ国・地域が批准した。

(2025年1月22日朝刊掲載)

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