×

連載・特集

緑地帯 よこみちけいこ 呉空襲の紙芝居 平和の願い託して①

 「おはなしはどうやって考えているのですか?」

 私は絵本や紙芝居をかいているが、このよく聞かれる質問に、一言で答えるのはなかなか難しい。物語を考えるのは本当に大変で、最初の一歩を踏むまでがいつも苦しい。

 逆に、最初がすいっとひらめけば、するするっと物語の形が出来上がることもある。その最初のヒラメキが生まれるまでが難儀なのだ。机の前に座って悩んでいても、なにか出てくることはないので、日常のどこかに面白いタネがおっこちていないかと、アンテナをはって日々を送っている。たとえば、ふと流れてきたテレビのニュース、たまたま目にした雑誌のイラスト、小学生の書いた作文集、SNSのつぶやき、スーパーマーケットで耳にした老夫婦の会話などなど、あらゆるところにヒントは落ちている。

 日常にひそんでいる宝物のようなタネをひろい集めては、自分の中にためていく。その中から「あ、これとあれを組み合わせれば、なにか面白いものが作れるかも!」とひらめく時がくる。この瞬間こそが創作作業の中で一番心が躍るといってもいいだろう。モノを作る醍醐味(だいごみ)でもある。

 そうやって作ってきた私の創作物の中に「ふうちゃんのそら」という呉市の空襲をテーマにした紙芝居がある。この作品を作ることになった小さなタネは、当時小学1年の娘の一言だった。(絵本作家=呉市)

(2025年1月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ