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[戦後80年 芸南賀茂] 呉湾の軍艦 ARで体験 地元ホテルがツアー開発 破壊された海上に再現

 終戦前、米軍の爆撃を受け呉湾周辺で大破するなどした艦艇の姿を、拡張現実(AR)技術を活用し、破壊された場所で再現するコンテンツを組み込んだツアーを、呉市のホテルなどが開発した。今年が戦後80年に当たるのに合わせ、戦争の惨禍に思いをはせてもらおうと企画した。(栾暁雨)

 「AR艦艇めぐり」として、クレイトンベイホテル(築地町)が県観光連盟から補助を受け事業化した。湾内を船で巡り、艦艇が破壊された地点でARグラスを着用すると海上に艦艇のCG画像が浮かび上がって見える仕組みだ。

 呉市史などによると、1945(昭和20)年3月と7月の空襲で、呉湾周辺では旧海軍の戦艦や空母、巡洋艦など計17隻が大破着底するなどした。ツアーは2コース。戦艦日向や伊勢、空母葛城、巡洋艦青葉など10隻を再現した。

 昨年12月下旬にモニターツアーを開き、約20人が参加。青葉や日向などが沈んだ5地点や海上自衛隊呉基地周辺を巡った。広島市の大学生大塚里菜さん(22)は「戦争が遠い昔になる中、その一端をリアルに感じることができた。呉に関心を持つきっかけになる」と話した。

 ツアーに使う衛星利用測位システム(GPS)とARを組み合わせたスマートフォンの専用アプリは、広島工業大などで講師を務める小西ちはやさん(48)=廿日市市=が開発した。近代史や戦艦大和が好きで、約10年前から大和ミュージアム(宝町)にある模型や古本の図面を参考に艦艇のCG画像を作成。「先端技術で歴史を後世につなぐ役割を果たしたい」と言う。

 広島国際大呉キャンパスの教員や学生も端末操作のサポートなどで協力する。同ホテルの倉本実マネージャー(61)は「犠牲になった乗員の慰霊碑や慰霊祭の世話をする遺族も高齢化し、記憶の継承は岐路に立つ。悲劇を忘れないためできることを模索したい」と話す。

(2025年1月24日朝刊掲載)

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