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オブザーバー参加見送り 核禁条約 政府が最終調整 与党国会議員を派遣か

 米ニューヨークの国連本部で3月にある核兵器禁止条約の第3回締約国会議を巡り、政府がオブザーバー参加を見送る方向で最終調整に入ったことが25日、分かった。日本同様に米国の「核の傘」の下にあるドイツなどの参加事例を検証していたが、日本周辺の安全保障環境の厳しさを理由に核抑止政策を堅持する立場から、不参加に傾いたとみられる。(中川雅晴、宮野史康)

 日本は禁止条約に加盟していない。被爆80年の節目に少なくとも政府として締約国会議にオブザーバー参加するよう、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協に加え、広島市の松井一実市長や公明党の斉藤鉄夫代表たちが相次いで石破茂首相に要請していた。可否について被爆国としての「歴史的責務」を踏まえると繰り返し表明していた政府の姿勢が問われそうだ。

 複数の関係者によると、首相は核・ミサイル開発を進める北朝鮮やロシア、中国の動向を背景に、米国の核を含む戦力で日本を守る「拡大抑止」を強化する考えを崩さなかった。禁止条約に否定的なトランプ米大統領との首脳会談を控え、信頼関係を重視する意向も働いたもようだ。政府としての参加を見送る一方で、与党国会議員を派遣する案があるという。

 首相は昨年9月の自民党総裁選中に、オブザーバー参加を「選択肢の一つ」と発言。首相就任後の10月には「真剣に考える」と述べた。昨年末からは、過去にオブザーバー参加したドイツやオーストラリアの事例を検証。今月22日、その作業を「ほぼ終えた」と説明した。

 ただ、平和賞受賞の祝意を伝えるため、今月8日に日本被団協の役員たちを首相官邸に招いて面会した際は、北朝鮮や中国の脅威を強調。核攻撃をシェルターで防御する意義を説くなど核兵器の存在を前提にした持論を展開し、被爆者を失望させていた。

核兵器禁止条約
 核兵器の開発や製造、使用、威嚇などを違法とする初の国際条約。前文で被爆者の苦しみや核兵器廃絶への努力に言及している。オーストリアやメキシコなど核兵器を持たない国々が制定を主導し、2017年7月に国連で採択された。21年1月に発効し、これまで94カ国・地域が署名、73カ国・地域が批准した。

(2025年1月26日朝刊掲載)

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