天風録 『山火事と原爆』
25年1月26日
「これは私ではなく、他の大統領の下で起きた事態だ」。大規模な山火事で被害が広がっているロサンゼルスを視察した後、トランプ米大統領はそう語ったという。どこか人ごとのような受け止めに聞こえる▲民主党のカリフォルニア州知事とは以前から対立してきた。山火事対応を非難しながらも、24日には政府からの支援を示した。だがこれもトランプ流のディール(取引)なのか。何と不法移民対策を支援の条件とした▲広い範囲で山林と家々が炎に包まれ、焼け野原に。少なくとも28人が死亡した。大変な災害だが、「原爆を落とされた後の広島のようだ」との表現はおかしい。先日、米国のニュースでキャスターが言った言葉。軽々しいと被爆者が憤るのも当然だ▲トランプ氏が似た発言をし、きのうも語ったという。火災被害の大きさを例え、「核兵器が爆発したかのようだ」と。核の本当の恐ろしさを全く分かっていない。そんな大統領の機嫌を石破茂首相は伺うつもりなのか▲核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加を―。被爆者は求めるが、政府は3月の会議に参加しないらしい。米国への配慮か。核ある限り、どの大統領でも起き得る悲劇なのに。
(2025年1月26日朝刊掲載)
(2025年1月26日朝刊掲載)