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連載・特集

緑地帯 よこみちけいこ 呉空襲の紙芝居 平和の願い託して③

 私は紙芝居が大好きだ。昔、保育士をしていた頃、紙芝居の舞台が登場するやいなや「やった!」と子どもたちは歓声をあげ、扉が開くのをわくわくして待っていた。お話が始まり、紙がすーっと抜かれ、次の場面が出てくる瞬間を、みな息をのんで見守る。紙芝居は場を支配する力があり、観客を物語の世界へどんどん引き込んでいく。まさに小さな劇場、読み手は絵で芝居をする俳優なのだ。

 だが、紙芝居の扱いは世間では絵本よりだいぶ低く見られていると思う。新しい紙芝居を作っても「紙芝居なんていつまでやってるの?」「絵本を作ればいいのに」など、心ないことを言われ、悔しい思いもたくさんした。

 そんな頃、はがきをいただいた。「紙芝居の好きな人が集まる“呉かみしばいのつどい”の会を作りました」と。

 紙芝居を大事に思っている人が地元にいるんだ!と、驚いた。この会の発起人が中峠(なかたお)房江さんだ。中峠さんとは偶然、カフェのギャラリーで知り合った。壁に展示していた私の絵をたまたま見かけて「あっ!この子、私の子どもの頃にそっくり」と、声をかけていただいたのがきっかけだ。

 ちなみにこのカフェで1カ月ほど展示をしたが作品はまったく売れず、誰も見ていないし、で「この展示会は失敗やな」と落ち込んでいたが、後にこの時の出会いが大きなものとなる。失敗だと思っても、頑張ってやったことに無駄はないなとしみじみ思う。(絵本作家=呉市)

(2025年1月25日朝刊掲載)

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