天風録 『1秒の重み』
25年1月31日
どうすれば歯止めをかけられるのか。人類滅亡までの時間を表す終末時計が今年、1秒減って89秒になった。最長で17分もあったのに、近年は2分、100秒、90秒と坂道を転がるように短くなった▲ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は核兵器を何度もちらつかせる。中東では保有国イスラエルを巻き込んだ争いが絶えない…。核兵器使用のリスクが高まったことが大きな要因だろう。わずか1秒とはいえ、過去最短をまた更新した意味を軽く見るわけにはいかない▲核兵器を巡る危機だけではない。10年ほど前からは、不十分な気候変動対策が重要視されるようになった。トランプ氏の米大統領返り咲きも終末時計を早めたに違いない。就任演説で、化石燃料を「掘って掘って掘りまくれ」とぶち上げたのだから▲1期目は、身勝手な言動などで残り時間を1分以上も短くした。さらに傍若無人になったのではないか。世界がどうなるか不安を感じる人は各国にいよう▲人類に残された時間は限られているのに、核大国のリーダーに歯止め役は期待できそうにない。「一秒一秒が重要な意味を持つ」。今年の終末時計の発表会見で披露された言葉が胸に重い。
(2025年1月31日朝刊掲載)
(2025年1月31日朝刊掲載)