著者に聞く 「改訂版 檻を壊すライオン」 楾大樹さん 憲法 生かすも殺すも有権者
25年2月2日
憲法という檻(おり)を、国家権力になぞらえたライオンが飛び出そうとしている―。憲法との関係から時々の政治課題を読み説いた2020年出版の著書を改訂し、岸田政権下での反撃能力(敵基地攻撃能力)保有などへの分析を加えた。「近年の安倍、菅、岸田政権は、憲法を学ぶ格好の教材」と語る。
岸田文雄前首相は「軽武装・経済重視」を理念とした自民党宏池会(旧岸田派)を率いながら、安全保障では安倍政権の国防強化路線を発展させた。そんな姿勢に疑問を投げかける。
「象徴的」とみるのが、憲法9条の「専守防衛」に反するとされてきた反撃能力の保有決定だ。安倍政権も集団的自衛権の行使を容認した。憲法を尊重せず、自衛隊の権限を広げたとして「檻から出たライオンがさらに遠くに行っている」と表現する。
憲法21条の「知る権利」を侵した事例も多数取り上げた。自民党派閥の裏金事件は、政治資金収支報告書への不記載という形で明るみに出た。しかし、「誰がいつ、何のために始めたかが今も明らかになっていない」と強調。「金で政治がゆがめられ、知ることもできないのなら健全な民主主義は成り立たない」と言い切る。
裏金事件をきっかけに24年6月に改正された政治資金規正法の「抜け穴」にも紙幅を割いた。政治資金パーティー券の購入額の公開基準を従来の「20万円超」から「5万円超」に引き下げても、問題の本質は変わらないと指摘。「開催回数の制限がない。何度も開催すれば同じことだ」と唱える。
憲法の仕組みをひもとく講演を15年から全国で重ねており、千回を超えた。「社会に無関心だと政治家が檻を壊したり、擦り抜けたりする。憲法を生かすも殺すも有権者次第だ」。市民が政治に目を向け続ける大切さを説く。 (宮野史康) (かもがわ出版・1980円)
はんどう・たいき
1975年広島県海田町生まれ。中央大卒。広島弁護士会所属の弁護士。著書に「檻の中のライオン」「けんぽう絵本 おりとライオン」など。
(2025年2月2日朝刊掲載)
岸田文雄前首相は「軽武装・経済重視」を理念とした自民党宏池会(旧岸田派)を率いながら、安全保障では安倍政権の国防強化路線を発展させた。そんな姿勢に疑問を投げかける。
「象徴的」とみるのが、憲法9条の「専守防衛」に反するとされてきた反撃能力の保有決定だ。安倍政権も集団的自衛権の行使を容認した。憲法を尊重せず、自衛隊の権限を広げたとして「檻から出たライオンがさらに遠くに行っている」と表現する。
憲法21条の「知る権利」を侵した事例も多数取り上げた。自民党派閥の裏金事件は、政治資金収支報告書への不記載という形で明るみに出た。しかし、「誰がいつ、何のために始めたかが今も明らかになっていない」と強調。「金で政治がゆがめられ、知ることもできないのなら健全な民主主義は成り立たない」と言い切る。
裏金事件をきっかけに24年6月に改正された政治資金規正法の「抜け穴」にも紙幅を割いた。政治資金パーティー券の購入額の公開基準を従来の「20万円超」から「5万円超」に引き下げても、問題の本質は変わらないと指摘。「開催回数の制限がない。何度も開催すれば同じことだ」と唱える。
憲法の仕組みをひもとく講演を15年から全国で重ねており、千回を超えた。「社会に無関心だと政治家が檻を壊したり、擦り抜けたりする。憲法を生かすも殺すも有権者次第だ」。市民が政治に目を向け続ける大切さを説く。 (宮野史康) (かもがわ出版・1980円)
はんどう・たいき
1975年広島県海田町生まれ。中央大卒。広島弁護士会所属の弁護士。著書に「檻の中のライオン」「けんぽう絵本 おりとライオン」など。
(2025年2月2日朝刊掲載)