トランプ氏 「核」どう語る? 7日に日米首脳会談 1期目は「大幅に戦力強化・拡大」
25年2月6日
トランプ米大統領は首都ワシントンで7日(現地時間)、石破茂首相と初めて首脳会談をする。経済・外交が主題と見られるが、被爆地広島が関心を向けるのは、核を巡る超大国のリーダーの所信だ。大統領1期目(2017~21年)の言動を改めて振り返る。(編集委員 下久保聖司、田中美千子)
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「核戦力を大幅に強化、拡大しなければならない」。就任を翌月に控えた16年12月、交流サイト(SNS)でつぶやいた。ロシアへの対抗心を示した形だが、数千発もの核兵器を持つ米国を率いていく者としては危うい―。そんな批判にも反省の色を見せなかった。
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振り返れば大統領選中から、テロリストに対する核攻撃を示唆したり、日本や韓国に核武装を促す考えを口にしたりした。就任後も「私たちは核戦力でどの国にも劣ることはない」などと、国際社会が眉をひそめるような発言を繰り返した。
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18年2月、米政府の新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」に小型核の導入を明記した。通常核と比べ被害が局地的に抑えられるとして「使える核兵器」と呼ばれる。「核なき世界」を掲げたオバマ政権からの方針転換を示した形だ。実際にその後、小型核を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実戦配備を発表した。
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冷戦終結後、曲がりなりにも核軍縮の姿勢を見せてきた米国だが、トランプ政権は19年、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させた。オバマ氏のような民主党政権は条約を大切にする傾向があるのに対し、トランプ氏はタカ派の共和党内でも強硬的なことを印象づけた。
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20年7月、米国による史上初の核実験から75年に合わせ声明を出した。先の大戦終結を促したと評し「核抑止力は米国や同盟国に大きな利益をもたらした」と指摘した。自らも1次政権で臨界前核実験を3回実施した。
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返り咲きの2期目が始まって早々、ロサンゼルスの山火事について「核兵器が爆発したかのようだ」と発言。相変わらず無神経な一方で、米中ロ3カ国で核軍縮協議を進める意欲も示している。
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<div style="font-size:106%;font-weight:bold;">軍備を含む「力」を信奉</div><br>
<strong>広島市立大広島平和研究所の梅原季哉教授(国際関係論)の話</strong><br><br>
第2次トランプ政権の安全保障政策を仕切るのは、国防次官(政策担当)に起用されるコルビー元国防副次官補だろう。彼は核兵器廃絶を否定し、抑止力強化による中国封じ込めを目指す。小型核使用はあり得る、との立場ではないか。核使用のリスクがバイデン政権より高まるとみるべきだ。
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ただトランプ氏の出方は未知数だ。米国が一番であるために軍備を含む「力」を信奉する一方、戦争を否定する発言も重ねており、核をどう考えているか見えない。第1次政権の核政策で彼の意向が強く働いたのは、オバマ元大統領の業績とされるイラン核合意を離脱したくらい。精緻な政策に関心がないのでは。長続きする側近を持たないから、コルビー氏をいつ切るかも分からない。
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発言の整合性よりも、歴史に名を残せるなら飛びつくような面もある。ロシアや中国との核軍縮協議に意欲的なのは「俺ほど平和を愛し、取引できる者はいない」と示したいのだろう。ただ中国が応じるとは考えにくい。被爆地は核は絶対にだめだと、身をていして訴え続けねばならない。
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(2025年2月6日朝刊掲載)