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ホロコースト「証言」伝え30年 福山の記念館 20万人超来館 次世代への継承方法を模索

 第2次世界大戦中のホロコースト(ユダヤ人虐殺)を伝える福山市御幸町のホロコースト記念館が今年、30周年を迎える。国内初のホロコーストの教育施設として開館し、1月末までに国内外から約20万6千人が訪れた。吉田明生館長(55)は「子どもたちに歴史を伝え続けたい」と決意を新たにしている。(原未緒)

 同館は1995年6月に開館した。「アンネの日記」で知られるアンネ・フランクの隠れ家の部屋を再現した展示やホロコーストで命を落とした幼い子どもの靴、強制収容所で着られた服など、犠牲者の遺品や資料約500点を展示。昨年4月に来館20万人を達成した。

 開館のきっかけは71年にさかのぼる。同館の大塚信理事長(75)が旅先のイスラエルでアンネの父オットーさんと偶然出会い「ホロコーストで亡くなった子どもたちにただ同情するだけでなく、平和をつくるために何かする人になって」と託されたという。

 大塚理事長は独学でヘブライ語を学び、各国で資料を集めて開館にこぎ着けた。これまでに500人以上の生還者と面会を重ね「誰もが憎しみを超えて暴力の連鎖を断ち切るよう訴えていた」。亡くなった子どもたちの数に当たる150万人を超える来館を目指し、オットーさんの思いを伝え続ける。

 アウシュビッツ強制収容所が解放された日にちなむ国連の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」(1月27日)に合わせ、2023年からは各国の駐日大使や総領事を招いた追悼の式典も同館で催す。

 解放80年となった今年の式典では、地元の中高生が4カ国の大使たちを英語で案内し、展示や館内に咲くアンネのバラを紹介した。アンネの部屋の展示をガイドした一ツ橋中2年の亀山彩愛(さら)さん(13)は「展示や日記を通じ、戦争の非人道性が多くの人に伝われば」と願う。

 ホロコーストの生き証人が年々減る中、吉田館長は「今後は生還者の証言を直接聞けた人も少なくなっていく。次世代への発信や継承の方法を模索し続けたい」と力を込める。

(2025年2月7日朝刊掲載)

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