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広響25年度プログラム 平和の尊さ 音色に込めて

 広島交響楽団が2025年度に開く定期演奏会のプログラムが決まった。被爆80年に合わせ「Piece of Peace 平和のかけら」を年間テーマに設定。世界的な指揮者やソリストが続々と客演する。(桑島美帆)

巨匠ピリスと初の協演

 25年度は、クリスティアン・アルミンク音楽監督が率いる広響の2シーズン目を迎える。中でも注目なのは、8月5日の「平和の夕べ」コンサートだろう。昨秋、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したピアノ界の巨匠マリア・ジョアン・ピリスと初協演し、ベートーベンのピアノ協奏曲第4番を演奏。7、8日には大阪市と東京でも公演を開く。

 6月の特別定期演奏会でタクトを振る92歳のウラディーミル・フェドセーエフはロシア出身。少年期に「レニングラード包囲戦」を体験し、被爆地への思いも強い。5年ぶりの協演となる今回は、人気若手ピアニスト角野隼斗と15歳のトランペット奏者児玉隼人とともに、ショスタコービッチのピアノ協奏曲第1番を演奏する。9月には被爆80年の特別公演としてブリテン「戦争レクイエム」を上演する。

 「シン・ディスカバリー・シリーズ」は24年度に引き続きモーツァルトと、広島市出身の糀場(こうじば)富美子や細川俊夫たちが作曲した原爆犠牲者を悼む現代音楽でプログラムを構成。ピアニストの小林愛実や小菅優たち出演陣も目を引く。アルミンク音楽監督は「今の世界において平和がいかに重要であるかを再認識する機会になれば」と意気込む。

 このほか、6月の定演は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターで広響ミュージック・パートナーのフォルクハルト・シュトイデが弾き振りを披露。9月の定演は名匠尾高忠明が指揮する。いずれも翌日などにリーデンローズ(福山市)である「福山定期」にもラインアップされている。(敬称略)

広島交響楽協会 妹尾理事長に聞く

被爆80年 大きな意味持つ年

 広島交響楽協会の妹尾雅雄理事長(66)に、広島交響楽団の新シーズンへの抱負を聞いた。

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 被爆80年は、広響にとっても大きな意味を持つ年になる。原爆で壊滅的な被害を受けた広島の街で、音楽は人々の心の癒やしとなり、勇気を与えてきた。「平和の夕べ」コンサートで初協演するピリス氏は現代を代表するピアニストの一人。人生を懸けて次世代を育て、人のために何ができるかを考えている。平和を希求するヒロシマの思いとも重なる。

 就任2年目を迎えるアルミンク音楽監督は、とても親しみやすく、音楽に向き合う姿勢が新鮮でまじめ。人と人のつながりを確実に築き、監督として「広響チーム」をつくりあげている。故郷ウィーンで培った音楽性をさらに表現してくれることを期待したい。

 近年、広響の評価は全国的にも確実に上がっており、昨秋、音楽雑誌「音楽の友」の人気投票で、東京や大阪のオケと並んで11位に入った。演奏会後のアンケートや交流サイト(SNS)での評価も高い。

 だが、定演の入場者数は平均すると7割程度。他の地方オケ同様、財政面の厳しさを抱えている。コンサートの魅力を高め、ファンを増やしていきたい。被爆80年事業への寄付も募集している。たくさんの方々に協力をお願いしたい。

 外国人観光客の誘致も始めた。クラシックファンは国境を越えて広がっており、「ヒロシマ」は世界で通用する。伸びしろはあると思う。

 広響の終身名誉指揮者だった秋山和慶先生が先月急逝され、7月の定演は元音楽監督の高関健氏に代役をお願いした。プロオケとして、広響をここまで育てていただいた秋山先生の恩に報い、お客さまにより良い演奏を聴いていただけるよう、一層精進していく。

定期会員募集

 広島交響楽団は新年度の定期会員を17日から受け付ける。全10公演を毎回同じ座席で聴ける。S席4万1300円、A席3万7100円、B席3万2200円。座席が毎回異なる準定期会員は2万8千円。いずれも特別定期は含まれない。広響事務局☎082(532)3080。

(2025年2月8日朝刊掲載)

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