2025年度 広島市予算案 平和都市の発信力強化へ
25年2月8日
広島市は7日に発表した2025年度の当初予算案で、被爆80年事業や都市機能を強化するための大型ハード事業に力点を置いた。主な事業と市の財政状況をみた。(野平慧一、川上裕)
資料館改修 次世代教育も
広島市は被爆80年事業として新規の28事業を含む計80事業を実施する。「原爆死没者の慰霊と被爆者援護」と「平和文化の振興」をテーマに原爆資料館(中区)の改修に着手し、青少年の平和教育の推進などにも取り組む。25年度一般会計当初予算案に関連経費9億7900万円を計上した。
原爆資料館東館地下1階に新設する子どもにも分かりやすい展示や学習スペースの設計に入る。28年度の利用開始を目指す。また、25年度内に東館1階情報コーナーの内容を核兵器廃絶を求める国際的な動向や「核のタブー」を強く発信する展示に更新する。
市内の小中高生を対象に原爆投下の年月日と時刻や平和への意識などを尋ねる調査を実施。結果とともに市の平和教育の歩みを冊子にまとめる。
平和記念公園(中区)と米ハワイ州ホノルル市のパールハーバー国立記念公園の姉妹協定に基づく事業も実施。8月に現地の若者を招き、平和学習や広島の若者との交流の機会を設ける。
似島(南区)と戦争を題材にしたミュージカルやサッカーの国際チャリティーマッチを支援するなど、市民や民間団体による芸術やスポーツを通じた平和の実現を後押しする。このほか、核兵器廃絶を目指す科学者たちの国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会開催も支援する。
広島駅新ビルの周辺整備着々と
広島市が取り組む大型事業のうち、JR広島駅(南区)南口の再整備関連には42億300万円を盛り込んだ。新駅ビル2階に乗り入れる路面電車の「駅前大橋線」は夏ごろ開通を予定。駅ビルと商業施設「エールエールA館」をつなぐペデストリアンデッキ(歩行者専用橋)は26年春の通行開始を目指す。
A館へ中央図書館を移転させる費用は68億1900万円。中区で建設を始める広島城三の丸歴史館には17億9500万円を計上した。いずれも26年度の開館を目指す。
民間主導の再開発も後押しする。中区基町地区の再開発ビル建設へ19億8700万円を補助。新たにJR西広島駅(西区)南側に計画中の44階建てマンションなどの設計費の一部を負担する。
西区商工センターに国際会議や展示会を開ける「MICE(マイス)」施設を整備する検討を本格化。アストラムラインと広島高速4号の延伸ではそれぞれ都市計画決定の手続きを進める。
市債残高 最高見通し 1兆2647億円 事業費上振れ続く
広島市の借金に当たる市債残高は25年度末で過去最高の1兆2647億7100万円となる見込みだ。市民1人当たりに換算すると、107万円の借金を負っていることになる。
財政規模に対する借金総額の割合を示す「将来負担比率」は23年度決算時点で165・4%。20政令指定都市の中では最も高い。
一方、国からの交付税で全額返済できる「臨時財政対策債」を除いた実質的な市債残高は25年度末の見込みで6825億5700万円。16年度末比で123億5900万円減る見通しだ。7日の記者会見で松井一実市長は「臨時財政対策債を除いた借金は少しずつ右肩下がりだ」と強調した。
ただ、市は昨年11月、広島駅南口広場の再整備費を160億円増額すると発表した。このほかにも資材や燃料、人件費の高騰に伴う事業費の修正が相次いでおり、市の財政状況に影響を与える可能性がある。
(2025年2月8日朝刊掲載)
資料館改修 次世代教育も
広島市は被爆80年事業として新規の28事業を含む計80事業を実施する。「原爆死没者の慰霊と被爆者援護」と「平和文化の振興」をテーマに原爆資料館(中区)の改修に着手し、青少年の平和教育の推進などにも取り組む。25年度一般会計当初予算案に関連経費9億7900万円を計上した。
原爆資料館東館地下1階に新設する子どもにも分かりやすい展示や学習スペースの設計に入る。28年度の利用開始を目指す。また、25年度内に東館1階情報コーナーの内容を核兵器廃絶を求める国際的な動向や「核のタブー」を強く発信する展示に更新する。
市内の小中高生を対象に原爆投下の年月日と時刻や平和への意識などを尋ねる調査を実施。結果とともに市の平和教育の歩みを冊子にまとめる。
平和記念公園(中区)と米ハワイ州ホノルル市のパールハーバー国立記念公園の姉妹協定に基づく事業も実施。8月に現地の若者を招き、平和学習や広島の若者との交流の機会を設ける。
似島(南区)と戦争を題材にしたミュージカルやサッカーの国際チャリティーマッチを支援するなど、市民や民間団体による芸術やスポーツを通じた平和の実現を後押しする。このほか、核兵器廃絶を目指す科学者たちの国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会開催も支援する。
広島駅新ビルの周辺整備着々と
広島市が取り組む大型事業のうち、JR広島駅(南区)南口の再整備関連には42億300万円を盛り込んだ。新駅ビル2階に乗り入れる路面電車の「駅前大橋線」は夏ごろ開通を予定。駅ビルと商業施設「エールエールA館」をつなぐペデストリアンデッキ(歩行者専用橋)は26年春の通行開始を目指す。
A館へ中央図書館を移転させる費用は68億1900万円。中区で建設を始める広島城三の丸歴史館には17億9500万円を計上した。いずれも26年度の開館を目指す。
民間主導の再開発も後押しする。中区基町地区の再開発ビル建設へ19億8700万円を補助。新たにJR西広島駅(西区)南側に計画中の44階建てマンションなどの設計費の一部を負担する。
西区商工センターに国際会議や展示会を開ける「MICE(マイス)」施設を整備する検討を本格化。アストラムラインと広島高速4号の延伸ではそれぞれ都市計画決定の手続きを進める。
市債残高 最高見通し 1兆2647億円 事業費上振れ続く
広島市の借金に当たる市債残高は25年度末で過去最高の1兆2647億7100万円となる見込みだ。市民1人当たりに換算すると、107万円の借金を負っていることになる。
財政規模に対する借金総額の割合を示す「将来負担比率」は23年度決算時点で165・4%。20政令指定都市の中では最も高い。
一方、国からの交付税で全額返済できる「臨時財政対策債」を除いた実質的な市債残高は25年度末の見込みで6825億5700万円。16年度末比で123億5900万円減る見通しだ。7日の記者会見で松井一実市長は「臨時財政対策債を除いた借金は少しずつ右肩下がりだ」と強調した。
ただ、市は昨年11月、広島駅南口広場の再整備費を160億円増額すると発表した。このほかにも資材や燃料、人件費の高騰に伴う事業費の修正が相次いでおり、市の財政状況に影響を与える可能性がある。
(2025年2月8日朝刊掲載)