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社説・コラム

天風録 『原爆資料館の記録』

 毎朝、扉を開けて人を迎え入れるたび、最多記録を塗り替えている。広島市の原爆資料館。おととい、本年度の入館者数が200万人を超えた。開館して70年、初の大台突破である。あすから3日間は展示入れ替えで臨時休館するが、来月末まで記録をどこまで伸ばすのか▲円安で海外からの入館者が増えている。広島サミットによる宣伝効果や、日本被団協のノーベル平和賞受賞も追い風になったのではないか。今年は被爆80年、一層の上積みが望めそうだ▲とはいえハード・ソフト両面で抱える課題は重い。入館チケットのオンライン予約・販売を昨年始めたが、混雑がなくなったわけではない。資料を収蔵するスペースの確保も待ったなしである▲若者への継承も長年の懸案だ。新たな試みも始まっている。きのう資料館であった平和文化カフェも、その一つ。高校生らがクイズを交え、くつろいだ雰囲気の中、自分の言葉で平和を伝えるための工夫を学んでいた▲年間入館者200万人超時代にあった態勢づくりが急がれているのだろう。記録もおろそかにはできないが、記憶にこそ重きを置きたい。国内外から訪れる人たちの心に末永く残る平和発信を目指さねば。

(2025年2月17日朝刊掲載)

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