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核禁会議 不参加を表明 核軍縮 政府姿勢に疑問符 先行事例 検証不足

 岩屋毅外相の記者会見は18日午後4時過ぎに始まった。3番目の話題として自ら、「核兵器禁止条約の第3回締約国会議にわが国がオブザーバー参加することは、適当とは言えない」と不参加を表明。主な理由に挙げたのは、核抑止力の重要性だった。だが、オブザーバー参加で安全保障政策にどのような影響が及ぶかは説明せず。結局、政府による過去の事例の検証とは何だったのか。核軍縮への本気度に疑問符が付く結果となった。(宮野史康)

 禁止条約へのオブザーバー参加は、署名や批准とは異なる。加盟国とは違い、核兵器や核使用の威嚇を否定する条約の義務は負わない。ドイツやオーストラリアは、参加しながら米国の核抑止に頼り続けている。

 それでもオブザーバー参加しないのはなぜか―。岩屋氏は会見で、米国の核戦力を含む軍事力で日本を守る拡大抑止が「不可欠」と力説した。従来の自民党政権と同じく米国の意向を最も優先した末の判断に映った。

 石破茂首相が指示したドイツやオーストラリアなど過去のオブザーバー参加国の検証は踏み込み不足の面が目立った。公表したのは過去2回の会議での発言など事実関係が中心。参加国の安全への影響や、参加国と米国との関係の変化などについては評価しなかった。

 首相は一時探った自民党議員の派遣も党内の一部慎重論に配慮し、見送った。関与に一貫して消極的だったこれまでの政権と何ら変わらない姿勢がうかがえた。官邸で首相にオブザーバー参加を直談判した日本被団協をはじめ、結局は被爆者の落胆を招いただけだった。

「情けない」「とても残念」 広島の被爆者や首長落胆

 日本政府が核兵器禁止条約の第3回締約国会議へのオブザーバー参加見送りを正式に表明した18日、広島の被爆者や首長たちは「情けない」「残念」と落胆した。

 日本被団協代表委員で広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(82)は「非常に情けないやら、恥ずかしいやら、悔しいやら、そんな気持ちばっかりだ」と嘆いた。政府がした過去のオブザーバー参加国の検証について「どれぐらい詳しく検証したのか聞きたい。参加しないという結論ありきだ」と懐疑的な見方を示した。

 市民団体「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)の田中美穂共同代表(30)も政府の検証を疑問視。参加は必ずしも効果的でないとした岩屋毅外相の発言に「よくそんなことが言えるなと思った。これまで市民や被爆者がしてきた発信はどうなるのか」と憤った。

 広島県の湯崎英彦知事は県庁で報道各社の取材に対応。「核兵器を巡る環境が厳しい時だからこそ、オブザーバー参加で廃絶への取り組みを進めるのは意義がある。そうしないと判断したのはとても残念だ」と述べた。

 広島市の松井一実市長はコメントで、参加見送りは被爆地の願いに背くと指摘。「市民社会の思いを受け止め、国会の場でも諮った上で核兵器廃絶へ国際社会が前進するよう対応を」と求めた。

「一日も早く条約批准を」 日本被団協の田中熙代表委員

 日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(92)は18日、「きわめて残念」との談話を発表した。「政府は条約を国会で議論し、一日も早く署名、批准すべきだ。核兵器のない世界に向けて先頭に立つことを願う」としている。

 談話の中で、田中さんは平和賞授賞式の演説で、条約の普遍化を目指し、原爆体験者の証言の場を開くよう各国に求めたことに触れ、「核兵器は人類と共存できない」と強調した。

 被団協は、談話を外務省にメールで送信したという。

(2025年2月19日朝刊掲載)

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