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広島避難者「将来が不安」 ウクライナ侵攻3年 支援が縮小 言葉の壁も 募る孤独感

 ロシアによるウクライナ侵攻の長期化は、国外へ避難している人たちにも一層の苦難を強いている。広島市内で暮らす家族は、公的機関や民間団体の支援縮小などに直面する。物価高や言葉の違いにも不安を抱えつつ、出口の見えない避難生活を続けている。(小林可奈、頼金育美)

 「これからは自立していかないと」。南部クリブイリフ出身のアンナ・テスレンコさん(38)が、自らに言い聞かせるように話した。生活基盤を築く上で頼りにしてきた日本の公的機関や民間団体の支援が段階的に終わりを迎えている。

 2022年4月、広島市へ避難してきた。小学3、6年の子ども2人と、昨年7月に合流した夫ディマさん(39)の4人暮らし。光熱費は同9月から自己負担になり、民間団体の生活費支給も今春で終わる。家賃の免除は続くが、住まいの公的住宅は単身用の1Kだ。約20平方メートルの洋室で家族4人が寝食を共にしている。

 アンナさんは美容サロン、ディマさんは自動車関連会社で働く。ただ、物価高で生活費はかさみ「将来が不安」と本音が口をつく。もっと広い住居に移りたいが、家計を考えると諦めざるを得ないのが現実だ。

 母国の自宅は子ども部屋を備えた3LDKだった。穏やかで余裕があった日常を取り戻すすべは今は見えない。「私たちに戦争を止めることはできない。待つしかないのです」と行方を見つめる。

 東部ドニプロ近郊から逃れてきた女性(46)は、悲哀をにじませながら語った。「努力していますが、まだ十分には慣れません」。目が不自由な夫(58)とともに、22年春から市内の公的住宅に暮らす。日常生活に依然として立ちはだかる大きな壁が「言葉」だ。

 夫妻は23年から、避難民を対象にした広島YMCA専門学校(中区)の無料の日本語教室に通っている。月3、4回の個別レッスンは1回1時間。少しずつ上達しているが、交友関係を広げる上ではまだ支障がある。「私には仲間が必要」。夫はそう繰り返し、長引く避難生活で募る孤独感を隠さない。

 夫妻が「心のよりどころ」という日本語教室は、同校が募金や民間団体の助成金を充てて運営してきた。しかし、支援縮小の流れが進む中、4月以降の運営資金は確保できていない。講師の竹原尚子さん(53)は「避難している人たちの思いに応えたい」と継続策を探っている。

 侵攻から3年を前に、ロシアと米国が和平に向けた協議を始めた。蚊帳の外に置かれたウクライナは反発を強める。大国の論理で混迷する情勢に、夫妻は「人が殺されず、子どもたちが安全に学校に行ける揺らぎない平和が欲しい」と願う。

(2025年2月24日朝刊掲載)

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