医師の戦争犯罪 童話に重ねて 本坊由華子主宰「世界劇団」 来月に広島公演 「人間がモノに…」 揺さぶる価値観
25年2月22日
広島市在住の本坊由華子(34)が主宰する舞台芸術団体「世界劇団」が3月22、23日、代表作「零(こぼ)れ落ちて、朝」を中区のJMSアステールプラザで上演する。グリム童話「青ひげ」に、第2次大戦中にあった外国人捕虜への生体解剖実験の史実を巧みに重ねる。本坊は「医師の戦争犯罪、日本の加害の歴史を残しておきたかった。私の一番の自信作」と語る。(渡辺敬子)
青ひげと妻が暮らす白い城には閉ざされた扉がある。奥で何か行われているが、妻は知ることができない。それは偉業か悪行か。青ひげは英雄か悪人か。名誉のため、代用血液開発のため、国家のため―。そこから、こぼれ落ちてくるものは何かと問いかける。
本坊の戯曲は、せりふの繰り返しが美しい言葉遊びのような趣を帯びる。俳優が極限の身体表現に挑むうち、発する言葉は複数の意味を持ち始める。物語は重層化しながら加速し、美術や音楽とともに感性と価値観を揺さぶる。
劇作家であり、演出、振り付け、俳優も担う本坊は現役の精神科医。愛媛大医学部在学中に演劇部「世界劇団」の10代目団長となり、2017年に社会人劇団として名を継いだ。信頼する俳優やスタッフを全国から集める方式で「拠点は日本」として活動する。
外科医の父から聞かされた「武勇伝」にも影響を受けた本作。「オペ室では人間がモノになり得る。医師の高揚感は人道を踏み外す怖さがある。倫理のせめぎ合いが起こり、白と黒は簡単に入れ替わる。戦争における軍隊にも似ている」と着想を語る。「舞台と病院という異なる空間を行き来しながら、私自身がバランスを保っているのかもしれない」と明かす。
出演は小林冴季子、本田椋、本坊由華子。舞台美術は杉山至。23年に初演し、兵庫県の豊岡演劇祭をはじめ5都市で上演した。今年は広島、三重、東京で再演する。「被爆地であり、戦前の歴史が見えにくい広島で演じることで、作品に新しい意味も生まれるはず。どんな舞台が立ち上がるのか、私自身とても楽しみにしている」
22日は午後1時と7時、23日は午後1時開演の3回公演。3500円(前売り3千円)など。世界劇団☎090(2502)0923。
(2025年2月22日朝刊掲載)
青ひげと妻が暮らす白い城には閉ざされた扉がある。奥で何か行われているが、妻は知ることができない。それは偉業か悪行か。青ひげは英雄か悪人か。名誉のため、代用血液開発のため、国家のため―。そこから、こぼれ落ちてくるものは何かと問いかける。
本坊の戯曲は、せりふの繰り返しが美しい言葉遊びのような趣を帯びる。俳優が極限の身体表現に挑むうち、発する言葉は複数の意味を持ち始める。物語は重層化しながら加速し、美術や音楽とともに感性と価値観を揺さぶる。
劇作家であり、演出、振り付け、俳優も担う本坊は現役の精神科医。愛媛大医学部在学中に演劇部「世界劇団」の10代目団長となり、2017年に社会人劇団として名を継いだ。信頼する俳優やスタッフを全国から集める方式で「拠点は日本」として活動する。
外科医の父から聞かされた「武勇伝」にも影響を受けた本作。「オペ室では人間がモノになり得る。医師の高揚感は人道を踏み外す怖さがある。倫理のせめぎ合いが起こり、白と黒は簡単に入れ替わる。戦争における軍隊にも似ている」と着想を語る。「舞台と病院という異なる空間を行き来しながら、私自身がバランスを保っているのかもしれない」と明かす。
出演は小林冴季子、本田椋、本坊由華子。舞台美術は杉山至。23年に初演し、兵庫県の豊岡演劇祭をはじめ5都市で上演した。今年は広島、三重、東京で再演する。「被爆地であり、戦前の歴史が見えにくい広島で演じることで、作品に新しい意味も生まれるはず。どんな舞台が立ち上がるのか、私自身とても楽しみにしている」
22日は午後1時と7時、23日は午後1時開演の3回公演。3500円(前売り3千円)など。世界劇団☎090(2502)0923。
(2025年2月22日朝刊掲載)