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[核兵器禁止条約 第3回締約国会議] 加盟説得へ議論を深めて サーローさん ニューヨークへ

日本不参加「胸かきむしられる」

 カナダに住む広島の被爆者サーロー節子さん(93)が、3日に開幕する核兵器禁止条約の第3回締約国会議に合わせて米ニューヨーク入りする。核兵器保有国やその同盟国をどう条約に引き入れるか、推進する各国政府や市民による議論の深まりを期待。オブザーバー参加を見送った日本政府へは「胸をかきむしられる」と怒りを口にした。(聞き手はトロント金崎由美)

 締約国には、核保有国とその同盟国に核抑止の危険性を説き、禁止条約の署名や批准を促す義務がある。市民からの働きかけも大切だ。私は今回、外交官と市民双方の発言に耳を傾け、条約を広める「普遍化」の実践例や、今後すべき事を学びたいと思っている。

 核保有国や同盟国の市民は特に、核兵器の恐ろしさを自国で伝え、政府を動かす責務がある。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のカナダに住む私もその一人。ささやかながら普遍化に努力している。先月は地元紙に寄稿し、条約に加わらないのは「歴史的に誤った選択だ」と強調した。

 被爆国が条約に前向きになる意義は大きい。だが、またも日本政府は締約国会議へのオブザーバー参加を拒んだ。怒りと悲しみで胸をかきむしられる思いだ。被爆者の訴えを本気で聞いているのだろうか。

 本来、締約国会議で扱う議題は日本が世界で最も貢献できる分野のはずだ。核被害者の支援は、広島、長崎、そしてビキニ水爆実験の経験が生きる。設立へ検討が進む国際信託基金にお金を出すのも可能。核抑止に依存した現状でもできる貢献からすべきだ。

 禁止条約は、条文をどう行動に移すかを発効後に決めていくのが前提だった。第1回と第2回の議論や報告は具体性に乏しい面もあったが、今回は核兵器の非人道性を専門的に検討する「科学諮問グループ」などの報告が予定される。進捗(しんちょく)に注目したい。ただ、グループに被爆者医療や被害調査を担ってきた日本の専門家はおらず、残念。締約国も日本の経験を重視してほしい。

 4月には核保有国や核依存国が重視する核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会が控える。禁止条約こそNPTの軍縮義務を補完する。禁止条約をより前に進める意思をみんなで分かち合いたい。

さーろー・せつこ
 広島市生まれ。13歳の時に爆心地から1・8キロの学徒動員先で被爆。広島女学院大卒。カナダ・トロント大で修士号(社会福祉学)。1970年代から核兵器廃絶運動に関わり、2017年の国際非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN=アイキャン)へのノーベル平和賞授賞式で演説した。トロント在住。

(2025年3月2日朝刊掲載)

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