[核兵器禁止条約 第3回締約国会議] 「原爆は未来を奪う悪魔の兵器」 広島で胎内被爆 浜住治郎さん
25年3月5日
廃絶目指し演説で力説
米ニューヨークの国連本部で開幕した核兵器禁止条約の第3回締約国会議で、広島の胎内被爆者で日本被団協の浜住治郎事務局次長(79)=東京都稲城市=が3日、演説した。「原爆は未来を奪い、家族を苦しめる悪魔の兵器。悲劇を繰り返してはならない」と強調。「核兵器のない世界」に向けて、条約の推進を期待した。(ニューヨーク発 金崎由美)
浜住さんは、母親が妊娠3カ月の時におなかの中で被爆した。爆心地近くの会社に出て原爆の犠牲になった父に触れ「今も思わない日はない」と吐露。世界に約1万2千発の核兵器が存在する事実を踏まえ「まだ戦争は終わっていない。被爆者は核兵器がゼロにならないと安心できない」と力を込めた。
また、昨年のノーベル平和賞を受けた日本被団協が核兵器廃絶と原爆被害に対する国家補償を求めて運動してきた経緯も紹介し、「道半ばだが私たちは諦めない」と決意を表明。拍手を浴びた。
会議の冒頭では、ラフメトゥリン議長(カザフスタン)があいさつし、日本被団協への祝意を伝えた。その上で「被爆80年を経て核兵器の存在はかつてなく世界の安全を脅かしている」とし、「廃絶への揺るぎない決意の再確認と具体的な行動」を呼びかけた。
国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長も「今回の会議には特別な責務がある」と指摘。核兵器保有国への軍縮義務の実行要求などを含む宣言の合意に期待した。
この日午後にはテーマ別の討論に入り、「核使用を伴う紛争が人類にもたらすリスクと結末」を取り上げた。締約国の代表や国際法の専門家たちが、核戦争防止に向けた取り組みの強化について意見を交わした。
会議は7日まで。核兵器を持つ9カ国や、米国の核抑止に依存する日本は条約に未署名・未加盟で、オブザーバー参加もしていない。
(2025年3月5日朝刊掲載)