[国際女性デー2025] 多様な人の関与で意識改革 UNウィメン日本事務所長 焼家さんに聞く
25年3月7日
広島市西区出身の国連職員、焼家(やきや)直絵さん(51)が2月に国連女性機関(UNウィメン)の日本事務所長に就き、ジェンダー平等に取り組んでいる。国内外に根強いジェンダー格差の現状や、是正に向けた取り組みについて聞いた。(小林可奈)
trong>―普段はどんな活動をしているのですか。trong>
日本政府との連携・支援調整や国会議員との意見交換のほか、広告主になる企業やPR・広告会社向けの事業も展開している。イベントを開いたり解説書や調査結果を提供したりして、消費者が触れる情報から「女・男はこうあるべきだ」といったステレオタイプな見方をなくそうと働きかけている。
trong>―ことしは国連が定めた「国際女性年」から50年です。国内外のジェンダー格差を巡る現状をどう見ていますか。trong>
政治参画や教育などで一定の進展はあった一方、課題も山積している。例えば、世界の女性の就業率や賃金は男性に比べて低く、貧困率は高い。女性の国家元首が誕生していない国の数は約110に上る。
日本でも、女性の国会議員や地方議員の割合などが示すように依然として格差が大きい。性別役割分担への固定観念、無意識の偏見が残り続けているからだろう。他の国に比べて改革のスピードが遅いと感じている。
trong>―格差の是正に向けて求められることは。trong>
制度や政策、議論、そして意識改革が必要だ。その上で男性の参画は欠かせない。ジェンダー平等への取り組みは、社会的・文化的ギャップを解消していくこと。「女性による女性のためのもの」「女性優遇」ではない。一朝一夕にできないと思える変革でも、多様な人の関与と行動によって実現する。
trong>―軍縮や平和を巡る議論でも、ジェンダーの視点がより重視されるようになりました。trong>
紛争地から50キロ圏内に暮らす女性は6億1200万人(2023年時点)と、1990年代から倍以上に増えた。ウクライナやパレスチナ自治区ガザなどで切迫した危機がある中、性的暴力をはじめ、紛争下での女性の被害に向き合うことは不可欠だ。
同時に、女性は紛争の予防・解決、平和の構築・維持において「積極的な主体者」でもある。女性が和平交渉に関与した方が合意が持続するという研究もある。女性の参画が軍縮、平和への道を切り開いていくという視点は重要だ。
trong>―日本事務所長のポストに自ら手を挙げたそうですね。trong>
広島女学院中・高(中区)時代に女性被爆者の体験談を聞いたのが私の活動の原点だ。戦争や核兵器の被害を考え、平和のために行動する上で、女性の立場や視点が大切だと知った。女性の地位が低い前任地ソマリアでの経験も大きい。現地でUNウィメンの活躍に触れ、私もその一助になりたいと思った。一人一人が平等に機会を与えられ、個性を生かせる社会へ力を尽くしたい。
trong>やきや・なおえtrong>
広島女学院中・高、国際基督教大を卒業後、オーストラリア国立大大学院で国際関係論の修士号取得。イラクやコソボなどで支援活動後、2001年に世界食糧計画(WFP)に入職。WFPのシエラレオネ、ミャンマー各事務所副代表、日本事務所代表、ソマリア臨時副代表などを経て、25年2月から現職。
trong>UNウィメンtrong>
国連が2010年7月、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(地位向上)のため既存の4機関を統合して発足させた。欧米とアフリカ、中東を含む計7カ国にリエゾンオフィス(連絡事務所)があり、アジア唯一の日本事務所は15年4月に開設された。
(2025年3月7日朝刊掲載)
日本政府との連携・支援調整や国会議員との意見交換のほか、広告主になる企業やPR・広告会社向けの事業も展開している。イベントを開いたり解説書や調査結果を提供したりして、消費者が触れる情報から「女・男はこうあるべきだ」といったステレオタイプな見方をなくそうと働きかけている。
政治参画や教育などで一定の進展はあった一方、課題も山積している。例えば、世界の女性の就業率や賃金は男性に比べて低く、貧困率は高い。女性の国家元首が誕生していない国の数は約110に上る。
日本でも、女性の国会議員や地方議員の割合などが示すように依然として格差が大きい。性別役割分担への固定観念、無意識の偏見が残り続けているからだろう。他の国に比べて改革のスピードが遅いと感じている。
制度や政策、議論、そして意識改革が必要だ。その上で男性の参画は欠かせない。ジェンダー平等への取り組みは、社会的・文化的ギャップを解消していくこと。「女性による女性のためのもの」「女性優遇」ではない。一朝一夕にできないと思える変革でも、多様な人の関与と行動によって実現する。
紛争地から50キロ圏内に暮らす女性は6億1200万人(2023年時点)と、1990年代から倍以上に増えた。ウクライナやパレスチナ自治区ガザなどで切迫した危機がある中、性的暴力をはじめ、紛争下での女性の被害に向き合うことは不可欠だ。
同時に、女性は紛争の予防・解決、平和の構築・維持において「積極的な主体者」でもある。女性が和平交渉に関与した方が合意が持続するという研究もある。女性の参画が軍縮、平和への道を切り開いていくという視点は重要だ。
広島女学院中・高(中区)時代に女性被爆者の体験談を聞いたのが私の活動の原点だ。戦争や核兵器の被害を考え、平和のために行動する上で、女性の立場や視点が大切だと知った。女性の地位が低い前任地ソマリアでの経験も大きい。現地でUNウィメンの活躍に触れ、私もその一助になりたいと思った。一人一人が平等に機会を与えられ、個性を生かせる社会へ力を尽くしたい。
広島女学院中・高、国際基督教大を卒業後、オーストラリア国立大大学院で国際関係論の修士号取得。イラクやコソボなどで支援活動後、2001年に世界食糧計画(WFP)に入職。WFPのシエラレオネ、ミャンマー各事務所副代表、日本事務所代表、ソマリア臨時副代表などを経て、25年2月から現職。
国連が2010年7月、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(地位向上)のため既存の4機関を統合して発足させた。欧米とアフリカ、中東を含む計7カ国にリエゾンオフィス(連絡事務所)があり、アジア唯一の日本事務所は15年4月に開設された。
(2025年3月7日朝刊掲載)