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仏の核政策研究家 真下俊樹さんに聞く 強い連帯意識 後押し 増強は考えにくい

 フランスのマクロン大統領が表明した同国の核兵器による欧州各国の防衛検討について、フランス核政策を研究する真下俊樹さん(70)=長野県=に背景や今後の展望を聞いた。(聞き手は小林可奈)

 今回の方針表明は、トランプ米政権の姿勢を受けたフランスらしい決断だ。米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の核抑止力は、フランスと英国のほか、米国の核兵器が欠かせなかった。

 しかし、加盟国に負担増を求めるトランプ政権は今後、ドイツなどに核兵器を配備する「核共有」政策などを変える可能性がある。そこでフランスは米国に依存せず、自国の核兵器で欧州を防衛しようという意図を明確にした。

 もともとフランスは安全保障で独立路線を取る国。米国に頼らないという意識は強い。さらに欧州連合(EU)を脱退した島国の英国に比べ、同じEUの一員で大陸でつながっている各国との連帯意識も強い。急速に距離を縮める米ロ対欧州という構図は今後、より先鋭化していくだろう。

 一方で、フランスが核兵器を今後増強するとは考えにくい。既に国内の核兵器製造施設は大部分が廃止・解体されているからだ。欧州各国への核抑止力の強化は、現有の核兵器で対応していくのではないか。また各国との距離も近いため、米国が欧州で展開している「核共有」のような政策も取らないだろう。

ましも・としき
 1954年京都府生まれ。東京大文学部卒。パリのフランス国立社会科学高等研究院で開発経済などを専攻し、欧州各国の環境問題活動家、緑の党と交流。法政大非常勤講師などを経て、現在はフリーでフランス核政策、エネルギー政策を研究している。

(2025年3月7日朝刊掲載)

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