『記者のつぶやき』 被爆者遠ざけた演説
25年3月11日
「自民党こそが国民の最も近いところにいる」。石破茂首相は9日の党大会で語気強く、夏の参院選での必勝を期した。派閥裏金事件で失った党への信頼を、いまだ取り戻せていないとの危機感がうかがえた。
首相は演説で「戦後80年」と「昭和100年」の歴史を振り返り、広島と長崎への原爆投下に触れた。「平和の実現のため、最大の力を尽くす」と力説し、日米同盟の強化を改めて訴えた。ただ核廃絶には言及せず、米国の「核の傘」への依存を示したものとなった。
折しも、核兵器禁止条約第3回締約国会議が核廃絶への「揺るぎない決意」の宣言を採択して閉幕した。会議へのオブザーバー参加も、党国会議員の派遣も見送った首相。演説では「歴史に謙虚に学ぶ」とも述べたが、少なくとも被爆者を党から遠ざけたように思えた。(堀晋也)
(2025年3月11日朝刊掲載)