国際賢人会議【解説】 核抑止論 脱却見通せず 後退させぬ決意にじむ
25年4月1日
国際賢人会議の提言は、核軍縮の歩みを後退させまいとする強い決意がにじんだ。議論を交わしたこの2年余り、核兵器を巡る国際情勢がかつてなく悪化したことを思えば当然だ。それだけに、核廃絶に欠かせない道のりとして、核抑止論からの脱却が見通せていないのは物足りない。
提言は、広島や長崎の会合で核兵器の非人道性に触れた点を踏まえ、核戦争を防ぐ必要性を打ち出した。具体的な措置として、核実験停止の維持や核保有国と非保有国の対話、急速に発展する人工知能(AI)のリスク回避を並べた。
会議は岸田文雄前首相が核兵器のない世界に向けて「具体的な道筋を考える」と創設した。ロシアのウクライナ侵攻で危機が強まる中、核保有国の有識者を含めて国際社会に向けてメッセージを出す意義は小さくない。
しかし被爆者が求め、政府が目指すのは核廃絶という高みだ。地道な取り組みを重ねると共に、大胆な発想と行動が必要だ。その一つ、核兵器禁止条約を重視する姿勢は見えない。
何より日本政府が核兵器への依存を減らすための提言が乏しい。米国の核抑止力の強化を求める政府の意向を反映するかのようだ。核廃絶の過程では、いずれ核抑止力から脱却する時が来る。その方策を欠いては、現実的な廃絶の道筋を示したとは言えない。(宮野史康)
<国際賢人会議がまとめた提言の主な内容>
・核戦争の危機が過去数十年間で最も高まっている
・核実験停止の堅持
・核分裂性物質の生産停止
・核兵器を持つ大国間、保有国と非保有国の対話
・広島・長崎への政治リーダーたちの訪問
(2025年4月1日朝刊掲載)
「核戦争防ぐ緊急行動を」 国際賢人会議閉幕 政府に提言
提言は、広島や長崎の会合で核兵器の非人道性に触れた点を踏まえ、核戦争を防ぐ必要性を打ち出した。具体的な措置として、核実験停止の維持や核保有国と非保有国の対話、急速に発展する人工知能(AI)のリスク回避を並べた。
会議は岸田文雄前首相が核兵器のない世界に向けて「具体的な道筋を考える」と創設した。ロシアのウクライナ侵攻で危機が強まる中、核保有国の有識者を含めて国際社会に向けてメッセージを出す意義は小さくない。
しかし被爆者が求め、政府が目指すのは核廃絶という高みだ。地道な取り組みを重ねると共に、大胆な発想と行動が必要だ。その一つ、核兵器禁止条約を重視する姿勢は見えない。
何より日本政府が核兵器への依存を減らすための提言が乏しい。米国の核抑止力の強化を求める政府の意向を反映するかのようだ。核廃絶の過程では、いずれ核抑止力から脱却する時が来る。その方策を欠いては、現実的な廃絶の道筋を示したとは言えない。(宮野史康)
<国際賢人会議がまとめた提言の主な内容>
・核戦争の危機が過去数十年間で最も高まっている
・核実験停止の堅持
・核分裂性物質の生産停止
・核兵器を持つ大国間、保有国と非保有国の対話
・広島・長崎への政治リーダーたちの訪問
(2025年4月1日朝刊掲載)
「核戦争防ぐ緊急行動を」 国際賢人会議閉幕 政府に提言