防衛整備案 期待と不安 市議ら安全性 懸念も 日鉄呉跡地の機能配置方針
25年4月1日
呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区跡地への複合防衛拠点の整備案を巡り、防衛省が31日に示したゾーニング(機能配置)。防衛省の担当者から説明を受けた呉市議の多くは民間企業誘致や防災機能についての提案を前向きに受け止めた。一方、拠点が攻撃の対象になりかねないなどと、住民の安全性を危ぶむ声も上がった。(高木潤、開沼位晏)
防衛省地方協力局総務課の村井勝課長たちが市議会の議会協議会(全員協議会)でゾーニングを説明した。20ヘクタール程度の民間企業誘致エリアは「中長期的に活躍できる企業が量産体制を確立する必要がある」と必要性を強調した。市議の一人は「最先端の企業の誘致をお願いしたい」と期待を込めた。
防災拠点に整備方針のヘリポートに関して、騒音の影響を尋ねる市議もいた。防衛省側は「ヘリが常駐するわけではない」とした一方、災害派遣で自衛隊の輸送機オスプレイを使う可能性に触れた。海側からの出入りが基本だが、「民家の上を通ることは排除されない」とした。
一方、無人機の製造・整備施設については、「無人機と言われるとドキッとする」と不安の声もあった。別の市議は複合防衛拠点そのものに懸念を示し「有事の際には市民の命と暮らしを破壊する」と訴えた。
住民にゾーニングなどを直接説明する機会について、防衛省側は「地元の関心は非常に高い。呉市の意向をうかがいながら対応を検討したい」と答えた。
協議会後、新原芳明市長は「かなり具体的なゾーニングの内容を示してもらえた。よく検討して、対応を決めていきたい」と話した。
市民の思いさまざま
防衛省が示した複合防衛拠点のゾーニングについて、呉市民たちにさまざまな思いが交錯した。
呉商工会議所の若本祐昭会頭は「市の人口が20万人を切ろうとしている中、人が増えるとの予感を持てる内容。早期に契約に進んでほしい」と評価した。研究関連施設の整備で若い世代が増えることへの期待も示した。
この日、市役所前で拠点に反対する活動をした市民団体「日鉄呉跡地問題を考える会」の森芳郎共同代表(82)は訴えた。「無人機の製造施設や火薬庫の配置を見て、有事の際に攻撃を受けないか、平和を脅かされないか、不安が一層募った」
3人の子どもを育てる40代女性は「『安心して住める呉』とわが子に言えなくなる。母親の立場からすれば産業用地として活用してほしい」。飲食店を営む塩見絵里子さん(49)は「日鉄の閉鎖で大打撃を受けた仲間は多く、物価高で客がさらに遠のくかもしれない。雇用につながるものになればいい」と話した。(栾暁雨、小林旦地)
(2025年4月1日朝刊掲載)
防衛省地方協力局総務課の村井勝課長たちが市議会の議会協議会(全員協議会)でゾーニングを説明した。20ヘクタール程度の民間企業誘致エリアは「中長期的に活躍できる企業が量産体制を確立する必要がある」と必要性を強調した。市議の一人は「最先端の企業の誘致をお願いしたい」と期待を込めた。
防災拠点に整備方針のヘリポートに関して、騒音の影響を尋ねる市議もいた。防衛省側は「ヘリが常駐するわけではない」とした一方、災害派遣で自衛隊の輸送機オスプレイを使う可能性に触れた。海側からの出入りが基本だが、「民家の上を通ることは排除されない」とした。
一方、無人機の製造・整備施設については、「無人機と言われるとドキッとする」と不安の声もあった。別の市議は複合防衛拠点そのものに懸念を示し「有事の際には市民の命と暮らしを破壊する」と訴えた。
住民にゾーニングなどを直接説明する機会について、防衛省側は「地元の関心は非常に高い。呉市の意向をうかがいながら対応を検討したい」と答えた。
協議会後、新原芳明市長は「かなり具体的なゾーニングの内容を示してもらえた。よく検討して、対応を決めていきたい」と話した。
市民の思いさまざま
防衛省が示した複合防衛拠点のゾーニングについて、呉市民たちにさまざまな思いが交錯した。
呉商工会議所の若本祐昭会頭は「市の人口が20万人を切ろうとしている中、人が増えるとの予感を持てる内容。早期に契約に進んでほしい」と評価した。研究関連施設の整備で若い世代が増えることへの期待も示した。
この日、市役所前で拠点に反対する活動をした市民団体「日鉄呉跡地問題を考える会」の森芳郎共同代表(82)は訴えた。「無人機の製造施設や火薬庫の配置を見て、有事の際に攻撃を受けないか、平和を脅かされないか、不安が一層募った」
3人の子どもを育てる40代女性は「『安心して住める呉』とわが子に言えなくなる。母親の立場からすれば産業用地として活用してほしい」。飲食店を営む塩見絵里子さん(49)は「日鉄の閉鎖で大打撃を受けた仲間は多く、物価高で客がさらに遠のくかもしれない。雇用につながるものになればいい」と話した。(栾暁雨、小林旦地)
(2025年4月1日朝刊掲載)