[戦後80年 芸南賀茂] 戦中建造のコンクリ船 「武智丸」 映像作品に
25年4月3日
呉の三津田高放送部制作 全国総文に出品へ
呉市の三津田高の放送部が、戦時中に建造されたコンクリート船「武智丸」を題材にしたドキュメント映像を制作した。金属の足りない戦況下で窮余の策で建造され、終戦後は呉市安浦町の港を守る防波堤に―。数奇な運命を老船が一人称で語るナレーションも入れた。夏の全国高校総合文化祭のビデオメッセージ部門に県代表として出品する。(小林旦地)
「わしは武智丸」。お年寄りの優しい口調で始まる映像は約4分半。同部の3人が昨夏に取材を始め、8回ほど現地を訪れて武智丸をさまざまな角度から撮影した。その動画にナレーションを付け、住民へのインタビューや戦時中の資料映像とともにまとめた。
3年の上田千尋さん(17)は「住民が防波堤を『武智丸』と呼んでいて、地域に溶け込んでいると感じた」と話す。住民からの親しみを表現するために武智丸を擬人化し、2年の蒋瑶(しょうよう)さん(16)が声を担当した。
堤防内部に入ったカメラは機関室や壁面の窓などを捉え、防波堤が船だったことを実感させる。上空からのドローン映像は、湾内の穏やかな波を写し、防波堤としての役割がよく分かる。2年の山元壮太さん(16)は「画像や字幕のサイズを合わせるなど、見やすいよう工夫を凝らした」と話す。
作品は昨秋の県予選で最優秀賞に輝き、中国大会でも優勝した。全国での上映に臨む上田さんは「見た人が武智丸に興味を持ち、実際に行ってみたいと思ってもらいたい」と願う。
(2025年4月3日朝刊掲載)