原爆使用のウラン 隠された歴史訴え 核禁条約 第3回締約国会議 コンゴ出身モンビロさん 採掘時の被曝 実態調査を
25年4月7日
米ニューヨークの国連本部で3月にあった核兵器禁止条約の第3回締約国会議には、核実験を含めてあらゆる段階で生じる核被害を訴えようと市民や支援者が集った。コンゴ(旧ザイール)出身のイザヤ・モンビロさん(52)=南アフリカ=もその一人。広島と長崎に投下された原爆に使われたウランの多くがコンゴ産だった事実や、被害調査の必要性を強調する。思いを聞いた。(金崎由美)
―締約国会議に出席した理由は。
核時代の本当の始まりについて、コンゴ人という当事者として世界に語りたかった。米国の市民団体の支援を受け渡航した。広島と長崎、そして韓国に住む被爆者とも出会い多くの収穫を得た。
―原爆の材料と言えばカナダや米国内から供給された印象があります。
実際には大半がベルギー領コンゴ(当時)のシンコロブエ鉱山で産出する質の高いウランだった。米国が原爆開発を進めた1940年前半のマンハッタン計画は、コンゴなしに成り立たなかった。だが米国は、シンコロブエに関する情報を徹底的に秘匿した。原爆開発には植民地支配と搾取、情報隠しが不可欠だった。その構造は現在も核兵器の保有を支えている。
―現地調査を模索しているそうですね。
劣悪な環境でウランが素手で採掘され、輸送される過程で多くの人が被曝(ひばく)したことは明らか。その後も被曝は続いてきた。調査に応じる人への弾圧がないと保証できる環境の下、聞き取りをする必要がある。
―核問題への関心は、どのような活動が土台になっているのですか。
ケープタウンを拠点に、コンゴから逃れてきた難民を支援するNGO(非政府組織)を運営している。その活動の中で原爆開発の歴史を問うている。広島原爆の日の8月6日には平和集会も開いている。
―シンコロブエ周辺地域では、希少金属を巡り武装勢力などによる紛争が深刻を極めていると聞きます。現地調査は治安上も難しいのでは。
意図的に空白にされた歴史を埋め、将来世代に伝える努力を怠ってはならない。広島と長崎でも関心を持ってもらい、連帯したい。今月7日までに国連人権理事会へ(国連加盟国の人権状況を定期的に検証する「普遍的審査」に向けた)報告書をNGOとして提出する。シンコロブエに関する証言への弾圧や妨害を防ぐよう役割を果たすことを理事会に求める内容を含む。原爆がもたらした真の人道的被害を明らかにする一歩になる。
シンコロブエ鉱山
第2次大戦中、原爆製造に使ったウランの大半が採掘された鉱山。ウランはコンゴやポルトガル領だった隣国アンゴラの港から運び出し、米ニューヨーク州スタテン島で保管。ミズーリ州セントルイスやテネシー州オークリッジで精錬や濃縮を行った。ウランの採掘はコンゴがベルギーの植民地支配から独立する1960年まで続き、その後閉鎖された。現在はコバルトなどの盗掘が相次いでいるという。
(2025年4月7日朝刊掲載)
―締約国会議に出席した理由は。
核時代の本当の始まりについて、コンゴ人という当事者として世界に語りたかった。米国の市民団体の支援を受け渡航した。広島と長崎、そして韓国に住む被爆者とも出会い多くの収穫を得た。
―原爆の材料と言えばカナダや米国内から供給された印象があります。
実際には大半がベルギー領コンゴ(当時)のシンコロブエ鉱山で産出する質の高いウランだった。米国が原爆開発を進めた1940年前半のマンハッタン計画は、コンゴなしに成り立たなかった。だが米国は、シンコロブエに関する情報を徹底的に秘匿した。原爆開発には植民地支配と搾取、情報隠しが不可欠だった。その構造は現在も核兵器の保有を支えている。
―現地調査を模索しているそうですね。
劣悪な環境でウランが素手で採掘され、輸送される過程で多くの人が被曝(ひばく)したことは明らか。その後も被曝は続いてきた。調査に応じる人への弾圧がないと保証できる環境の下、聞き取りをする必要がある。
―核問題への関心は、どのような活動が土台になっているのですか。
ケープタウンを拠点に、コンゴから逃れてきた難民を支援するNGO(非政府組織)を運営している。その活動の中で原爆開発の歴史を問うている。広島原爆の日の8月6日には平和集会も開いている。
―シンコロブエ周辺地域では、希少金属を巡り武装勢力などによる紛争が深刻を極めていると聞きます。現地調査は治安上も難しいのでは。
意図的に空白にされた歴史を埋め、将来世代に伝える努力を怠ってはならない。広島と長崎でも関心を持ってもらい、連帯したい。今月7日までに国連人権理事会へ(国連加盟国の人権状況を定期的に検証する「普遍的審査」に向けた)報告書をNGOとして提出する。シンコロブエに関する証言への弾圧や妨害を防ぐよう役割を果たすことを理事会に求める内容を含む。原爆がもたらした真の人道的被害を明らかにする一歩になる。
シンコロブエ鉱山
第2次大戦中、原爆製造に使ったウランの大半が採掘された鉱山。ウランはコンゴやポルトガル領だった隣国アンゴラの港から運び出し、米ニューヨーク州スタテン島で保管。ミズーリ州セントルイスやテネシー州オークリッジで精錬や濃縮を行った。ウランの採掘はコンゴがベルギーの植民地支配から独立する1960年まで続き、その後閉鎖された。現在はコバルトなどの盗掘が相次いでいるという。
(2025年4月7日朝刊掲載)