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在韓被爆者支援 医師の軌跡 闘病中の河村さん 妻が編集し自費出版

「二重三重の苦しみ 忘れてはならぬ」

 在韓被爆者の支援に尽力してきた広島市中区の内科医河村譲さん(81)の講話や著作物をまとめた「見えないものに目を注ぐ」が自費出版された。闘病中の河村さんに代わって妻純子さん(78)が編集した。援護の枠外に置かれた在韓被爆者ヘのまなざし、次代へのメッセージを伝える。

 河村さんは開業医として診療や共同研究に取り組む傍ら、韓国の被爆者を日本に招いて無償治療する「在韓被爆者渡日治療広島委員会」の活動に奔走した。初代会長の父虎太郎さん(1987年に73歳で死去)の後を継ぎ、委員会が活動を終えた2016年まで約30年間、会を率いた。  本書では全273ページの3分の1を割き、河村さんが自らの病院内で毎月続けた朝礼講話の原稿を収録した。韓国の被爆者について折々に「日本の植民地支配の生き証人」「二重三重の苦しみをおった人々」と語り、「私達が絶対忘れてはならない、ずっと係(かか)わってゆかねばならない」などと説き続けた。  このほか夫妻で活動したバングラデシュ支援団体の会報などへの寄稿文や、医学論文も載せた。  河村さんは23年春に病に倒れ、入院している。かねて医学書の出版を目指していたことから、純子さんが「医学書は難しくても、これまでの活動や考えを本にしよう」と準備を進めた。200部を作り、研究機関などに今後寄贈する予定。  純子さんは「ヒロシマの医師として命を大切にし、苦しい立場に置かれた人々への共感を忘れてこなかった夫の軌跡を次代の人たちに知ってもらえたら」と願う。(小林可奈) 在韓被爆者渡日治療広島委員会
 1984年、開業医の河村虎太郎さんたちが設立。全国からカンパを募って、韓国で暮らす被爆者を招いて治療した。海外に住む被爆者(在外被爆者)への医療費全額支給を日本政府が始めた2016年までに、延べ572人を受け入れた。 (2025年4月14日朝刊掲載)

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