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社説・コラム

天風録 『教皇フランシスコの言葉』

 全ての命を守るため―をテーマに掲げていた。ローマ教皇フランシスコによる6年前の来日である。被爆地広島、長崎のほか、地震・津波・原発事故という三重の災害に見舞われた東日本大震災の被災地にもまなざしを向けた▲死去の報に13億人というローマ・カトリック教会の信者をはじめ大勢が悲嘆に暮れる。信者でなくとも、日本で語られたメッセージを私たちは忘れず、胸に刻んでおこう。核なき世界の実現や生きる支えになるからだ▲「原子力を戦争のために使うのは犯罪」。広島で痛烈にそう語り、長崎では「核兵器は私たちを守ってくれない」と抑止論を否定している。「核兵器禁止条約の原則にのっとり迅速に行動していく」と強調。いち早くバチカン市国は批准していた▲東日本大震災の被災者との面会にも、心を強く揺さぶられたようだ。帰路、「安全が保証されるまで原発を利用すべきではない」と明言。戦争に使えば破滅を、平和利用も重大な被害を引き起こすとして憂いを深めた▲ウクライナやパレスチナでの戦闘には停戦を呼びかけ、排他的なトランプ米政権を批判した。全ての命を守るために。為政者は耳を傾け、悔い改めてはどうか。

(2025年4月23日朝刊掲載)

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