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被爆証言 世界を航海 伊藤さん ピースボートきょう出発

 被爆体験を語り継ぐ活動をしている被爆者の伊藤正雄さん(84)=広島市中区=が、23日から非政府組織(NGO)「ピースボート」(東京)の船旅に加わり、世界各地で証言を重ねる。「核兵器のない世界に向け、政府を動かす民意を広げたい」と力を込める。

 伊藤さんは4歳のころ、爆心地から3・2キロの広島市庚午町(現西区)の自宅前で被爆した。近くの空き地で焼かれた無数の遺体の臭いは忘れられないという。

 原爆で兄と姉を亡くした。父は戦後、体がだるくなる「原爆ぶらぶら病」に苦しみ倒産。伊藤さんは入学したばかりの観音高を中退し、住み込みで働いた。「原爆の被害は一瞬ではない。非人道性を伝えたい」と語る。

 22日、外務省から非核特使の任命を受けた。横浜港を23日に出発し、3カ月にわたって、米国や中国、ドイツなど計18カ国を巡って証言する。平和記念公園(中区)でのガイドや証言は一休みとなるが「海外に行けない被爆者の気持ちを背負って取り組みたい」と意気込んでいる。(宮野史康)

(2025年4月23日朝刊掲載)

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