大和ミュージアムの20年を思う 館長・戸高一成 <5> これから
25年4月28日
font-size:106%;font-weight:bold;">命の尊さも伝える場に
大和ミュージアムは、呉の歴史の中で大きな位置を占める旧海軍と海軍工廠(こうしょう)によって築かれた技術の歴史を伝えるために建設されました。しかし技術は世界共通の学問の上に成り立つもので、呉だけのものではありません。
では何が呉の特色なのかと言えば、どんな物でも確実に、完全に造りあげる大きな力を持っていたことだと思います。このものづくりの伝統は呉が誇る歴史であり、現在の誇りでもあります。
しかし、技術の歴史を振り返ると、そこには戦争が大きく関わっていることに気付きます。技術とは、設計や製造といった部分だけではありません。高度な運用、つまり使う側の能力も必要になってくるのです。
技術は人により良い生活をもたらします。ですが、どんな技術でも誤った使い方をすれば大きな悲劇を生む。その事実を知ることが大切なのです。館内で展示されている戦死者の遺書などを読むとき、その思いは深く重いものとなります。
大和ミュージアムは、今までもリニューアル後も、興味深い資料や分かりやすい展示などで、呉が誇る技術の歴史を伝え続けます。同時に、戦争の悲惨さ、命の尊さを静かに考える場でもあり続けたいと思っています。=おわり
(2025年4月28日朝刊掲載)