[2025ひろしまFF] 平和大通り 今年もドラマ舞台 全通60年
25年5月1日
いつからだろうか。喜びあふれる光景が大通りになじんできたのは。広島市中心部を東西に貫く平和大通りは今月、鶴見橋から新己斐橋までの約4キロが全通して60年を迎える。「100メートル道路」と呼ばれた幹線道は毎日、車が行き交う。そして年に何度か、いくつものドラマが生まれる特別な空間に変わる。(山崎雄一)
「平和大通りは季節を感じられる。広島で一番好きな場所」。2025ひろしまフラワーフェスティバル(FF)のフラワーアンバサダーを務める大学生大段利々子さん(22)=西区=は言う。春はサクラ、秋にはイチョウが車道脇で色づく。新緑まぶしい5月3~5日のFF、真夏の8月6日に大通り沿いの平和記念公園である平和記念式典、冬はひろしまドリミネーションに、全国都道府県対抗男子駅伝競走大会(ひろしま男子駅伝)…。大通りには幾つも風物詩がある。
一帯は戦時中、空襲による延焼を防ぐために家屋を壊す建物疎開でできた防火帯だった。戦後、そこに市は復興のシンボルとして幅100メートルの道路建設を打ち出した。平和大通りの名は1951年に公募で決まったもの。「単なる道路で終わらせてはいけない。平和につなげんといけん」。当時の浜井信三市長はそう何度も言っていたと息子の順三さん(88)=佐伯区=は振り返る。
ちょうど半世紀前の75年。大通りに約30万の人々が集った。リーグ初優勝した広島東洋カープのパレードだ。沿道には拍手や紙吹雪が広がる。パレードの成功を受け、まちを代表する祭りの開催を目指していた企業や団体が尽力して77年に始まったのがFFだ。
その後もここで、市民は喜び、笑い、泣いた。96年の第1回ひろしま男子駅伝で優勝した広島がトップに躍り出たのはゴール前の平和大通り。サンフレッチェ広島がJ1を初めて制した2012年、カープがリーグ優勝した16年も優勝パレードで沸いた。
「FFの時の平和大通りは別世界なの」と幾田バトンスタジオ(廿日市市)の代表林玲菜さん(47)。チームは第1回からの常連だ。市民が参加できるFFで、大勢の視線を集める大通りでのパレードを目標にする団体は多い。
被爆80年の今年のFFに参加する広島レッドリーブスマーチングバンドの代表谷浦正典さん(71)=佐伯区=は言う。「パレードの経験は一生もの。そんな経験も平和でないとできないですからね」。自転車やランニングを楽しむ人、通勤時に新芽のわずかな変化を楽しむ人もいる。特別な日も、日常も、平和大通りは平和をかみしめる場所。そんな舞台で今年のFFも開幕が近づく。
にぎわい創出や安全性向上事業進む
広島市は近年、平和大通りの新たなにぎわいづくりや歩行者の安全性を高める事業に力を入れている。緑地帯を公園化して広場の整備を計画しているほか、自転車専用道や歩道橋の設置も進めている。
緑地帯はこれまで道路と同じ扱いだったが、都市公園に位置付けることで飲食店やステージ、休憩所などを設置できるようになる。市は緑大橋(中、西区)から東側の約2.6キロを公園化する計画で、2024年7月までに約1.1キロ分を完了した。
市は本年度、この一部に園路や花壇、休憩広場を設ける。また、緑地帯の樹木の管理とともに、飲食店経営やイベント開催をする事業者の公募も検討している。
歩行者と自転車を分ける自転車専用道は3.5キロのうち中区の白神社前の100メートルが完成し、3月から利用を開始した。
歩道橋は19年3月に開通した平和大橋(中区)に続き、西平和大橋(同)でも26年度以降の着工を予定している。市は「平和を実感してもらいながら安心して都心を回遊できるようにしたい」とする。(新山創)
(2025年5月1日朝刊掲載)
「平和大通りは季節を感じられる。広島で一番好きな場所」。2025ひろしまフラワーフェスティバル(FF)のフラワーアンバサダーを務める大学生大段利々子さん(22)=西区=は言う。春はサクラ、秋にはイチョウが車道脇で色づく。新緑まぶしい5月3~5日のFF、真夏の8月6日に大通り沿いの平和記念公園である平和記念式典、冬はひろしまドリミネーションに、全国都道府県対抗男子駅伝競走大会(ひろしま男子駅伝)…。大通りには幾つも風物詩がある。
一帯は戦時中、空襲による延焼を防ぐために家屋を壊す建物疎開でできた防火帯だった。戦後、そこに市は復興のシンボルとして幅100メートルの道路建設を打ち出した。平和大通りの名は1951年に公募で決まったもの。「単なる道路で終わらせてはいけない。平和につなげんといけん」。当時の浜井信三市長はそう何度も言っていたと息子の順三さん(88)=佐伯区=は振り返る。
ちょうど半世紀前の75年。大通りに約30万の人々が集った。リーグ初優勝した広島東洋カープのパレードだ。沿道には拍手や紙吹雪が広がる。パレードの成功を受け、まちを代表する祭りの開催を目指していた企業や団体が尽力して77年に始まったのがFFだ。
その後もここで、市民は喜び、笑い、泣いた。96年の第1回ひろしま男子駅伝で優勝した広島がトップに躍り出たのはゴール前の平和大通り。サンフレッチェ広島がJ1を初めて制した2012年、カープがリーグ優勝した16年も優勝パレードで沸いた。
「FFの時の平和大通りは別世界なの」と幾田バトンスタジオ(廿日市市)の代表林玲菜さん(47)。チームは第1回からの常連だ。市民が参加できるFFで、大勢の視線を集める大通りでのパレードを目標にする団体は多い。
被爆80年の今年のFFに参加する広島レッドリーブスマーチングバンドの代表谷浦正典さん(71)=佐伯区=は言う。「パレードの経験は一生もの。そんな経験も平和でないとできないですからね」。自転車やランニングを楽しむ人、通勤時に新芽のわずかな変化を楽しむ人もいる。特別な日も、日常も、平和大通りは平和をかみしめる場所。そんな舞台で今年のFFも開幕が近づく。
にぎわい創出や安全性向上事業進む
広島市は近年、平和大通りの新たなにぎわいづくりや歩行者の安全性を高める事業に力を入れている。緑地帯を公園化して広場の整備を計画しているほか、自転車専用道や歩道橋の設置も進めている。
緑地帯はこれまで道路と同じ扱いだったが、都市公園に位置付けることで飲食店やステージ、休憩所などを設置できるようになる。市は緑大橋(中、西区)から東側の約2.6キロを公園化する計画で、2024年7月までに約1.1キロ分を完了した。
市は本年度、この一部に園路や花壇、休憩広場を設ける。また、緑地帯の樹木の管理とともに、飲食店経営やイベント開催をする事業者の公募も検討している。
歩行者と自転車を分ける自転車専用道は3.5キロのうち中区の白神社前の100メートルが完成し、3月から利用を開始した。
歩道橋は19年3月に開通した平和大橋(中区)に続き、西平和大橋(同)でも26年度以降の着工を予定している。市は「平和を実感してもらいながら安心して都心を回遊できるようにしたい」とする。(新山創)
(2025年5月1日朝刊掲載)