緑地帯 田中今子 キース・ヘリングが見た広島⑦
25年5月2日
今回の調査では、壁画制作が実現しなかった主な理由として、広島訪問から2年と経(た)たない間にヘリングが他界したことが挙げられるという結論に至った。5月18日まで当館で開催中の展覧会では、ヘリングが広島で出会った人々のために描いた作品や各所で撮影された写真などを交えてこの経緯を詳細に紹介している。
そして、この調査結果を広島現地でも発表する機会を得た。被爆建物の旧日本銀行広島支店において「せこへい美術館」のプレ企画として開催したイベント「キース・ヘリングが見た広島」である。2024年7月21日から25日にかけて開催したこのイベントでは、ヘリングの広島訪問に関する出来事をパネルと映像で紹介した。同時に、刊行したワークブック「キース・ヘリングと平和をえがこう」を来場した子どもたちへ配布し、ヘリングがニューヨークの子どもたちと行った作品制作を体験するワークショップも実施した。「広島に壁画ができとったらね」「今やったらできたかもしれんね」と何人もの人が声をかけてくれた。
広島の中心地で、さらには歴史的に重要な意味をもつ場所で調査結果を展示することは、私たちの力だけでは決して成し得ないことだった。広島を訪れるたびに素晴らしい出会いに恵まれた。広島の街を歩き、食を堪能し、人々の想(おも)いに触れ、対話を重ねることがなければ、展示は実現しなかっただろう。(中村キース・ヘリング美術館主任学芸員=山梨県)
(2025年5月2日朝刊掲載)
そして、この調査結果を広島現地でも発表する機会を得た。被爆建物の旧日本銀行広島支店において「せこへい美術館」のプレ企画として開催したイベント「キース・ヘリングが見た広島」である。2024年7月21日から25日にかけて開催したこのイベントでは、ヘリングの広島訪問に関する出来事をパネルと映像で紹介した。同時に、刊行したワークブック「キース・ヘリングと平和をえがこう」を来場した子どもたちへ配布し、ヘリングがニューヨークの子どもたちと行った作品制作を体験するワークショップも実施した。「広島に壁画ができとったらね」「今やったらできたかもしれんね」と何人もの人が声をかけてくれた。
広島の中心地で、さらには歴史的に重要な意味をもつ場所で調査結果を展示することは、私たちの力だけでは決して成し得ないことだった。広島を訪れるたびに素晴らしい出会いに恵まれた。広島の街を歩き、食を堪能し、人々の想(おも)いに触れ、対話を重ねることがなければ、展示は実現しなかっただろう。(中村キース・ヘリング美術館主任学芸員=山梨県)
(2025年5月2日朝刊掲載)