天風録 『FFの種』
25年5月4日
祭りの種は50年前の秋にまかれた。平和大通りを30万人が埋めたカープの初優勝パレード。時速3キロの特別仕様車で進むナインに、誰もが笑顔で手と小旗を振った。赤い熱狂が種の土壌となった▲リオのカーニバルを手本としただけに、祭りと相性が良かったのだろう。あの幸せと興奮をもう一度―。市民の願いは2年後に、ひろしまフラワーフェスティバル(FF)という形で芽吹く。ことしの開幕を迎え、半世紀に及ぶ歴史の重みを感じた▲笑顔あふれる光景は今も昔も変わらない。パレードで音を奏でる人、踊る人、それに見入る人。露店で求めた食べ物を頰張り、目を細める姿にこちらの顔もほころぶ。非日常の喜びを味わう、祭りならではの時間だ▲テーマは「咲かそうよ 平和の種から 花いっぱい」。被爆80年に平和の尊さをかみしめる時間でもある。本紙ジュニアライターの中高生たちは被爆者への取材で感じたことを持ち寄り、作った詩をステージ発表した▲力強い結びが印象深い。「一緒にまいてみん? 未来へつなぐ平和の種」。その気持ちが平和大通りに広がっただろう。予報では心の種を温めるのに十分な日差しが、きょうもあすも降り注ぐ。
(2025年5月4日朝刊掲載)
(2025年5月4日朝刊掲載)