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[NPT準備委] 前半の討議終了 核抑止議論 かみ合わず 向き合わぬ保有国/禁止派も追及欠く

 2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて米ニューヨークの国連本部で開かれている第3回準備委員会は2日、前半の討議を終えた。「核抑止が世界の平和と安全を脅かしている」という核兵器禁止条約推進派の訴えに、核兵器保有国は正面から答えていない。かみ合ったやりとりに至らず、核抑止の議論は低調だ。(ニューヨーク発 宮野史康)

 禁止条約を推進し、核抑止の議論も主導するオーストリアの代表は4月29日の一般討論で「核兵器と核抑止は本質的に、壊滅的で地球規模の人道上の結末を招くという科学的な証拠が積み上がっている」と指摘した。こうした「正当な安全保障の懸念」に向き合うよう、核保有国に求めた。

 26年にある禁止条約の第1回検討会議で議長国を務める南アフリカも5月1日、「核兵器の存在は人類存続への深刻な脅威となっている」と強調。核兵器の保有は国際平和と安全に役立たないと断じ「核兵器を持たない国の安全を損なっている」と畳みかけた。

 一方、核保有国は従来の主張で核抑止の議論をかわしている。英国は「安全保障上、必要である限り核抑止を維持する」、ロシアは「代替案なしに、国際安全保障体制から核抑止は取り除けない」と明言。どの国も核抑止が具体的にどう安全保障に寄与しているかという点は掘り下げなかった。

 禁止条約推進派の追及が広がりを欠いた面もある。約190カ国・地域が加盟するNPTでは、核保有国5カ国と米国の「核の傘」の下にある日本や北大西洋条約機構(NATO)諸国に対し、核に依存しない非保有国が多数派。すでに禁止条約にも73カ国・地域が加盟しているが、関連の発言は一部の国にとどまった。

 準備委を傍聴する明治大の山田寿則兼任講師(国際法)は「核抑止の議論は、禁止条約派の中でも十分に浸透していない可能性がある。核保有国に説明責任を果たさせるためには、より多くの国が問いかける必要がある」と指摘する。その上で、議論の糸口として、核兵器使用のリスク低減に関する核保有国の発言に注目する。

 実際、フランスは「誤解や誤算のリスクを軽減する取り組みに努力する」と表明し、核兵器を持たない国を交えた対話に意欲を示した。非保有国側でも、オーストリアは「安全保障に核兵器が欠かせないと考える国と、核兵器が世界の安全保障への脅威だと考える国が関与し合う道を見つけないといけない」と認識している。

(2025年5月4日朝刊掲載)

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