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[NPT準備委] 共同声明「人道」を削除 英が要求 軍縮・不拡散教育

 2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け米ニューヨークの国連本部で開かれている第3回準備委員会で1日、日本政府がまとめた軍縮・不拡散教育の共同声明を発表した。複数の外交筋によると、前回の声明にあった核兵器の使用による「壊滅的な人道上の結末」という文言を英国の求めで削除。被爆の惨禍を巡る表現の後退に一部の国が反発し、賛同国に加わらなかった。(ニューヨーク発 宮野史康)

 過去の合意内容すら盛り込めず、核軍縮を取り巻く国際情勢の厳しさを浮き彫りにした。

 共同声明は、加盟国に軍縮・不拡散教育に取り組むように促す内容で、日本政府が代表して議場で読み上げた。22年の再検討会議で発表した前回の共同声明より5カ国多い94カ国が賛同し、核保有国では英国だけが加わった。核兵器の使用については「破壊的かつ多面的な影響と結末」をもたらすと指摘した。

 前回の共同声明では、核兵器使用に関し「壊滅的な人道上の結末」をもたらすと表現していた。外交筋によると、前回も賛同した英国が今回は記述の変更を求めた。核保有の正当性が損なわれるのを懸念したとみられる。日本政府は核保有国の関与を重視して受け入れたという。他の核保有国では、前回賛同した米国が今回は加わらず、ロ仏中も引き続き賛同国になっていない。

 一方、非保有国では、核兵器使用に関する表現の後退を受けて、前回の声明に加わっていたニュージーランドが今回は見送った。核兵器禁止条約を推進するオーストリアも賛同国にならなかった。外交筋は「現在の厳しい国際情勢の中で、協調する難しさを示している。各国とも来年の再検討会議で成果を得るため、今回の準備委では安易に妥協しにくい」と見立てた。

(2025年5月3日朝刊掲載)

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