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[NPT準備委] 核共有・抑止 再考促す 成果文書 2草案 採択へ攻防

 2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて米ニューヨークの国連本部で開かれている第3回準備委員会で、アジュマン議長(ガーナ)がまとめた二つの成果文書の草案の概要が7日、分かった。核共有や核抑止の再考を促す記述を含む。採択できるか、会期末の9日にかけて核兵器保有国と非保有国の外交交渉が続く。(ニューヨーク発 宮野史康)

 一つは「再検討プロセスの強化」と題した決定事項の草案で、核保有国に核戦力や核軍縮の取り組みに関する国別報告を要求。非保有国が報告の標準様式作りに関わり「核共有と拡大抑止に関する熟考を、合意の上で含める」としている。関連で、26年の再検討会議で、第1委員会に国別報告を議論する補助機関を設けるよう提案した。

 準備委では非保有国から、核共有や拡大抑止が核保有を固定化しNPTとは合致しないという指摘が相次ぎ、核保有国に説明責任を求める意見も出た。核保有国や「核の傘」の下にいる各国は反発しており、複数の外交筋は草案では「合意できないだろう」とみる。

 もう一つの文書は、再検討会議のたたき台となる勧告の草案。22年の前回再検討会議で最終文書案から削られた核保有国の「先制不使用」政策を盛り込み、「核兵器を最初に使わない共通の取り決めについて、信頼でき効果的で法的に拘束する方策に合意する」と記す。核保有国が非保有国を核攻撃しない「消極的安全保障」の意義も強調している。

 一方、核兵器禁止条約を巡っては「核兵器のない世界に向けた貢献に留意する」とした。当初検討した「NPTに基づく条約」の表現はなく後退した。外交筋は「禁止条約に反発する核保有国が受け入れられる内容ではなかった」と見立てた。

 ほかには「核兵器の使用と実験がもたらす壊滅的な人道、環境に関わる結末」に言及。爆発を伴う核実験の停止や、兵器用核分裂性物質の生産禁止にも触れている。

 加盟国は草案に基づき、議論を進める。19年の準備委では勧告を採択できず、合意が必要ない議長による勧告としてまとめた。

(2025年5月8日朝刊掲載)

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