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[NPT準備委] 核抑止再考 日本など反発 「傘」に頼る国 説明責任を警戒

決定事項の草案を議論

 2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて米ニューヨークの国連本部で開かれている第3回準備委員会は7日、決定事項の草案を議論した。核共有や核抑止の再考を促す記述に、米国の「核の傘」に頼る日本やカナダが相次いで反発した。(ニューヨーク発 宮野史康)

 アジュマン議長(ガーナ)がまとめた「再検討プロセスの強化」と題した草案は、再検討会議での核軍縮などに関する国別報告を定め、「核共有や拡大抑止の熟考」を求める可能性にも触れている。核保有国だけでなく、核の傘の下にある非保有国も自らに説明責任を課されるのを警戒しており、採択の行方に影響を与えそうだ。

 日本の市川とみ子軍縮大使は「核兵器の非保有国ではなく、保有国の国別報告に焦点を当てて議論を進めるべきだ」とけん制。カナダは、核共有は「NPTと完全に合致している」と強調し「草案でこの点に触れるのは生産的ではない」と指摘した。オーストラリアやドイツ、韓国も懸念を表明。米国は「核共有や拡大抑止政策を採る国はNPTに完全に従っている」と擁護した。

 一方、核兵器を持たず、核の傘にも入らない南アフリカは、安全保障を核兵器に頼る国に向け「核軍縮の推進のために取っている措置を知りたい」と要求。インドネシアは「草案の文章を支持する」と述べた。中国とロシアは核の傘の下にある国の報告には賛同しつつ、自国の報告には消極的な姿勢を示した。

 また準備委はこの日、26年の再検討会議を4月27日~5月22日に国連本部で開くと決めた。

「演説に肯定的評価」 岩屋外相 議長からの謝意も紹介

 岩屋毅外相は8日の参院外交防衛委員会で、米国で開催中の2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第3回準備委員会での自身の演説について「各国代表団から肯定的な評価をいただいたと聞いている」と述べた。

 準備委議長のハロルド・アジュマン氏(ガーナ)から、日本の核軍縮への取り組みに感謝されたと紹介。その上で「唯一の戦争被爆国として、現実的で実践的なアプローチで核兵器のない世界の実現へ取り組む」とNPTを重視する従来の考えを示した。公明党の三浦信祐氏への答弁。

 岩屋外相は4月28日の準備委の一般討論で、不透明な核戦力増強などで核軍縮の歩みに逆行する懸念を表明。過去2回の再検討会議で成果文書を採択できなかったとし「対話と協調の精神を最大限発揮し、来年一致団結しよう」と訴えた。

 立憲民主党の福山哲郎氏は、演説で核兵器禁止条約に触れなかった点を「残念」と指摘。岩屋外相は「あくまでNPT再検討会議の準備委なので」と釈明した。(堀晋也)

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記者のつぶやき

「隙間時間」に非公式協議

 会議の冒頭で突然、休会が告げられた。7日、2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて米ニューヨークの国連本部で開かれている第3回準備委員会。建物内のインターネット接続が不調で、マイクや通訳機器が使えないためという。

 会期があと3日という中でのハプニング。議事の遅れを懸念する外交筋は「施設が古いから」と嘆いた。一方、前向きな声も聞こえてきた。採択を目指す勧告や決定事項の文言を巡り、裏側で進む非公式の協議に時間を割けるからだ。

 実際、アジュマン議長は「すぐ来てもらおう」と事務方と話しながら足早に議場から姿を消した。米英豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)を巡って激しく対立する中国とオーストラリアの代表が話し込む姿も見られた。

 結局、ネット環境は小1時間で復活。討議は1時間半遅れで始まった。会期終盤の思わぬ「隙間時間」を外交官たちは有効活用できただろうか。

(2025年5月9日朝刊掲載)

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