天風録 『レオ14世』
25年5月13日
現実と重なって話題となったから観客が増えるのも当然だろう。ずばりの映画名「教皇選挙」である。おととい広島市内では、早々と「満席」の知らせを出した映画館もあった▲実際のローマ教皇選びに参加した日本の枢機卿や、今回選ばれたレオ14世も事前に見ていたそうだ。投票権を持つ枢機卿も初めて臨む人が大半。フィクションだと分かっていても、票の投じ方などが参考になったらしい。選挙を覆う秘密のベールはそれぐらい厚いのかもしれない▲事前に有力視された人が選ばれたためしはない―。今回も、そんな経験則通りの結果となった。選ばれたのは、超大国故に長年「タブー」とされてきた米国出身者だった▲前任者の進めた改革路線は、保守派との分断を広げてしまった。そんな中だからこそ、バランス感覚が求められたようだ。貧しい人に寄り添う従来の姿勢を継承しつつ、穏健な路線が保守派からも支持され、8割近い105票もの得票につながった▲レオ14世は10億を超す信者のトップとして絶大な影響力をどう生かすのか。「二度と戦争を起こしてはいけない」と早速呼びかけた。平和な世界に向け、被爆地とも歩調を合わせられるだろうか。
(2025年5月13日朝刊掲載)
(2025年5月13日朝刊掲載)