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森さん「戦後も悲劇は続く」 被爆米兵調査 東京で企画展

 広島市内で被爆死した米兵捕虜の存在を調査で明らかにした被爆者の森重昭さん(88)=広島市西区=の活動を伝える初の企画展が、東京都八王子市の中央大多摩キャンパスで開かれている。戦後80年の節目に母校の企画に協力した森さんは「戦争は終わってから何年も悲劇が続く。絶対してはいけない」と訴える。

 テーマは「森重昭と被爆米兵調査―戦争が終わるということ」。1945年7月28日に瀬戸内海沖で旧日本軍に撃墜され、柳井市伊陸に墜落した米爆撃機ロンサムレディー号を軸に構成する。

 当時の広島市内を空撮した写真には、捕虜となった後の収監先と、一人一人の足跡を添えた。森さんは「遺族は亡くなった証拠がなければ戦争が終わったと理解できない。徹底して調べ、50年かかった」と声を詰まらせた。

 被爆を免れた元機長トーマス・カートライトさん(2015年に90歳で死去)の手紙は、部下が射殺した日本人の遺族宛てもある。森さんは「ただ言えるのは、許すという行為は皆が思うより、はるかに尊いことだ」と振り返った。

 広島を訪れた16年当時のオバマ米大統領が森さんを抱擁する絵も並ぶ。展示は、大学側が経済学部卒の森さんに提案した。主導した法学部の森光教授(49)は「報復は正義なのか。米国人にも被爆死した人がいるので、被害者の立場でも考えてほしい」と話している。

 入場無料で来年3月31日まで。日祝日休館。同大資料館事務室☎042(674)2132。(堀晋也)

(2025年5月19日朝刊掲載)

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