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[戦後80年 遺構を巡る 芸南賀茂] 亀ケ首発射場跡(呉市倉橋町) 戦艦大和の主砲を試射

 呉市の倉橋島東端にある旧海軍施設「亀ケ首発射場跡」。兵器開発の一翼を担い、戦艦大和の主砲の試射も行った。倉橋町中心部から直線で約8キロ。機密を守りやすく、周囲に障害物がない点から、重要施設の場所に選ばれたとみられる。

 陸路で近づくのは難しく、船で向かった。石組みの突堤に上陸し茂みを進むと、コンクリート製の2重ドーム構造の検速所跡が現れた。内部には計測器の土台が残る。

 くらはし観光ボランティアガイドの会顧問の柳井敏弘さん(84)によると、浜辺と海上に電線網を張った二つの塔「線的柱」があり、砲弾が通過する時間差で初速を算出していた。射程40キロ超の大和の主砲の試射は、愛媛県大洲市方面に向けて行われ、島々でも弾道などを観測した。

 亀ケ首は明治期に旧海軍が整備。戦後は進駐軍が破壊し、詳しい史料は乏しい。だが、れんが造りの事務所や退避壕(ごう)の跡からは人がいた形跡を感じられる。2020年には旧軍港4市ゆかりの日本遺産の構成文化財に登録された。

 ガイドの会は、試射中の事故で亡くなった人の慰霊祭を開くなど、遺構の保存と伝承に力を注ぐ。倉橋中の授業でも郷土の史実を伝える柳井さんは「海軍史を知る上で重要な場所。平和教育にも活用して次世代に引き継ぎたい」と力を込める。(栾暁雨)

(2025年5月17日朝刊掲載)

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