社説 イスラエルの強硬姿勢 ガザでの殺りく即刻やめよ
25年5月25日
パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍が新たに大規模攻撃を開始し、連日多数の命を奪っている。ガザの保健当局によると、2023年10月の戦闘開始以降、ガザ側の死者は5万3千人を超え、うち1万6千人余りが子どもだ。すでに人道危機にある地で、犠牲者がますます増えている。イスラエルは直ちに攻撃をやめ、停戦交渉に戻らねばならない。
1月にいったん停戦合意したものの、イスラエルは3月に大規模な空爆を再開。恒久停戦への道筋を断っている。
今月17日に再び停戦交渉を開始させたが、ネタニヤフ首相は人質解放とイスラム組織ハマス掃討を掲げ「ガザ全域を制圧する」と宣言。空爆や地上侵攻を拡大した。結局、停戦は見通せなくなった。
ガザ全域の住民を最南部へ強制退避させ、イスラエル軍の駐留を継続して占領をさらに強める計画だとされる。ガザの人々は土地を捨てて逃げる以外に生き延びる道がない状況に追い込まれている。住民から土地を奪い占領することは許されない。あまりにも横暴で非道な行為だ。
ユダヤ人迫害の歴史から、これまでイスラエル批判に腰が引けていた欧州各国も非道な行為に黙ってはいられなくなったのだろう。英国、フランス、カナダの3カ国首脳はイスラエルに対し、大規模な地上侵攻を即時停止するよう求める共同声明を発表した。
ガザ住民の生活には医薬品や食料など人道支援物資が欠かせないが、イスラエルが搬入を止めている。これを共同声明は「容認できず、国際人道法に違反する恐れがある」と批判。支援物資の搬入拡大を求めた。
欧州連合(EU)は、イスラエルとの貿易関係などを定めた協定を見直すという。英国も貿易協定更新の交渉を停止すると表明した。
一方、トランプ米大統領はこのほど中東を歴訪したにもかかわらず、イスラエル訪問は見送った。強硬姿勢を貫くネタニヤフ氏と話しても、自分の手柄は見込めないという損得勘定を働かせたのか。
しかし、米国はこれまでイスラエルの後ろ盾となってきた。停戦合意が見いだせないから投げ出すのは、無責任過ぎる。イスラエルに停戦を強く働きかけるべきだ。
ワシントンでは、イスラエル大使館職員が撃たれて死亡する事件も起きた。執拗(しつよう)にガザを攻撃するイスラエルへの反感が背景にありそうだ。しかしイスラエルの人々に憎悪を向けるのは筋違いである。暴力の連鎖は断ち切らねばならない。
イスラエル国内でも停戦を求める声は強まっている。地元メディアの世論調査では、戦闘終結を望む国民は過半数を占める。退役軍人らからは停戦を求める署名入り書簡の公表が相次ぐ。それでも停戦に動かないのは、ネタニヤフ氏が連立を組む極右政党に配慮しているためとみられる。
今こそ国際社会の出番だろう。イスラエルによるガザ攻撃を一刻も早くやめさせ、人道危機をなくすことに、手を尽くさなくてはならない。
(2025年5月25日朝刊掲載)
1月にいったん停戦合意したものの、イスラエルは3月に大規模な空爆を再開。恒久停戦への道筋を断っている。
今月17日に再び停戦交渉を開始させたが、ネタニヤフ首相は人質解放とイスラム組織ハマス掃討を掲げ「ガザ全域を制圧する」と宣言。空爆や地上侵攻を拡大した。結局、停戦は見通せなくなった。
ガザ全域の住民を最南部へ強制退避させ、イスラエル軍の駐留を継続して占領をさらに強める計画だとされる。ガザの人々は土地を捨てて逃げる以外に生き延びる道がない状況に追い込まれている。住民から土地を奪い占領することは許されない。あまりにも横暴で非道な行為だ。
ユダヤ人迫害の歴史から、これまでイスラエル批判に腰が引けていた欧州各国も非道な行為に黙ってはいられなくなったのだろう。英国、フランス、カナダの3カ国首脳はイスラエルに対し、大規模な地上侵攻を即時停止するよう求める共同声明を発表した。
ガザ住民の生活には医薬品や食料など人道支援物資が欠かせないが、イスラエルが搬入を止めている。これを共同声明は「容認できず、国際人道法に違反する恐れがある」と批判。支援物資の搬入拡大を求めた。
欧州連合(EU)は、イスラエルとの貿易関係などを定めた協定を見直すという。英国も貿易協定更新の交渉を停止すると表明した。
一方、トランプ米大統領はこのほど中東を歴訪したにもかかわらず、イスラエル訪問は見送った。強硬姿勢を貫くネタニヤフ氏と話しても、自分の手柄は見込めないという損得勘定を働かせたのか。
しかし、米国はこれまでイスラエルの後ろ盾となってきた。停戦合意が見いだせないから投げ出すのは、無責任過ぎる。イスラエルに停戦を強く働きかけるべきだ。
ワシントンでは、イスラエル大使館職員が撃たれて死亡する事件も起きた。執拗(しつよう)にガザを攻撃するイスラエルへの反感が背景にありそうだ。しかしイスラエルの人々に憎悪を向けるのは筋違いである。暴力の連鎖は断ち切らねばならない。
イスラエル国内でも停戦を求める声は強まっている。地元メディアの世論調査では、戦闘終結を望む国民は過半数を占める。退役軍人らからは停戦を求める署名入り書簡の公表が相次ぐ。それでも停戦に動かないのは、ネタニヤフ氏が連立を組む極右政党に配慮しているためとみられる。
今こそ国際社会の出番だろう。イスラエルによるガザ攻撃を一刻も早くやめさせ、人道危機をなくすことに、手を尽くさなくてはならない。
(2025年5月25日朝刊掲載)