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ウクライナから福山に避難 戦時の母国思い ピアノ演奏披露

 ロシアの侵攻を受けるウクライナから福山市に避難しているアンナ・セメネンコさん(42)が24日、市立大(港町)でピアノの演奏を披露した。母国ではピアノ教師だったアンナさん。今も戦火にさらされ続ける古里に思いをはせ、平和を願う旋律を奏でた。

 アンナさんは、同大が世界バラ会議福山大会を記念して開いた日本語スピーチ大会の冒頭に登壇。ショパンの「スプリング・ワルツ」とモーツァルトの「トルコ行進曲」を弾いた。長女エヴァさん(8)と次女ソフィアちゃん(4)も見守る中、伸びやかで力強い音色を披露し、集まった約100人から大きな拍手を受けた。

 アンナさんたち家族3人は侵攻が始まった4カ月後の2022年6月、ウクライナ東部ハリコフから知人のいる福山市に避難した。夫はウクライナ政府の総動員令で出国できず、今も母国に残る。

 来日したばかりの頃は3カ月ほどで終わると思っていた異国での生活がもう3年になる。娘2人の世話や市内のレストランでの仕事、独学での日本語の勉強と忙しい日々を送る。

 古里は今も軍靴の音が鳴りやまない。アンナさんは最近、「帰っても元の暮らしに戻れるだろうか」と考えるようになったという。

 それでも、いつかまた母国で演奏できる日のために、ピアノの練習だけは毎日欠かさない。「きょうの演奏を聴いてくれた皆さんがウクライナのことを忘れず、平和について考えてくれたら」と力を込めた。(松本輝)

(2025年5月25日朝刊掲載)

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