朝凪(あさなぎ) 仏壇にある小さな石
25年5月28日
今月、すでに他界している祖父宛ての封書が実家に届いた。比島戦没者慰霊顕彰会-。差出人を見てある光景を思い出した。鹿児島の海岸から眺めた波立つ東シナ海。そして、祖父が仏壇に置いていた小さな石だ。
祖父の兄は第2次世界大戦中、フィリピンで戦死した。祖父が亡くなる4年前、「兄さんに手を合わせたい」と言うので指宿市へ2人で旅行をした。開聞岳の麓の花瀬望比(はなぜぼうひ)公園で、祖父はフィリピンの方向を望む海辺の鐘を突き「遺骨代わりに」とそばにあった石を持ち帰った。
封書には、今春あった慰霊の催しの様子を伝える便りが入っていた。事務局に電話し、来年からは私宛てに送ってもらうようお願いした。久しぶりに仏壇の石を手に取った。「H25・6」。サインペンでそう記されていた。懐かしい祖父の字だった。(社会担当・久保友美恵)
(2025年5月28日朝刊掲載)
祖父の兄は第2次世界大戦中、フィリピンで戦死した。祖父が亡くなる4年前、「兄さんに手を合わせたい」と言うので指宿市へ2人で旅行をした。開聞岳の麓の花瀬望比(はなぜぼうひ)公園で、祖父はフィリピンの方向を望む海辺の鐘を突き「遺骨代わりに」とそばにあった石を持ち帰った。
封書には、今春あった慰霊の催しの様子を伝える便りが入っていた。事務局に電話し、来年からは私宛てに送ってもらうようお願いした。久しぶりに仏壇の石を手に取った。「H25・6」。サインペンでそう記されていた。懐かしい祖父の字だった。(社会担当・久保友美恵)
(2025年5月28日朝刊掲載)