緑地帯 黒住(國本)奏 平和を学ぶ旅③
25年5月30日
2015年、広島で世界核被害者フォーラムが開催された。アメリカ先住民アコマプエブロのペトゥーチ・ギルバートさんは、故郷の近くにあるウラン鉱山での健康被害や環境汚染を訴えていた。広島から遠く離れた人々の声や大地の物語をもっと聞きたいと思い、翌年2月にペトゥーチさんを訪ねにニューメキシコ州へ行くことにした。
かつてのルート66を駆け抜けると、目の前に広がる圧倒的な景色。突き抜けるような青空、果てしなく続く赤い大地、遠くにそびえる巨大なメサ(岩山)。「よく来たね」と迎えてくれたペトゥーチさんの大きな笑顔を見て、一人旅の緊張や不安が一気に和らいだ。一緒に歩きながら、ペトゥーチさんは、いろんな物語を聞かせてくれた。数千年、数万年前という時間の中で人々が大地と共に紡いできた、カチーナ(精霊)や動物や木や風や岩の物語。そして、その大地に刻まれた先住民の抵抗と生き残り、ウラン鉱石の採掘、核実験の物語。
この大地は、生も死も美しさも醜さも破壊も創造も、全てを抱く深く大きな存在であることを、彼は教えてくれた。「私たちはあのカワティシマ(テイラー山)に守られているんだよ」。この地に生きてきた人々にとって、この山や大地や岩たちは、とても大切な、家族や友人のような存在なのだ。それを守りたいと思うことはごく自然なことだ。彼が歌うように話してくれた物語は、今でもずっと私の中で息をし続けている。(平和教育ファシリテーター=広島市)
(2025年5月30日朝刊掲載)
かつてのルート66を駆け抜けると、目の前に広がる圧倒的な景色。突き抜けるような青空、果てしなく続く赤い大地、遠くにそびえる巨大なメサ(岩山)。「よく来たね」と迎えてくれたペトゥーチさんの大きな笑顔を見て、一人旅の緊張や不安が一気に和らいだ。一緒に歩きながら、ペトゥーチさんは、いろんな物語を聞かせてくれた。数千年、数万年前という時間の中で人々が大地と共に紡いできた、カチーナ(精霊)や動物や木や風や岩の物語。そして、その大地に刻まれた先住民の抵抗と生き残り、ウラン鉱石の採掘、核実験の物語。
この大地は、生も死も美しさも醜さも破壊も創造も、全てを抱く深く大きな存在であることを、彼は教えてくれた。「私たちはあのカワティシマ(テイラー山)に守られているんだよ」。この地に生きてきた人々にとって、この山や大地や岩たちは、とても大切な、家族や友人のような存在なのだ。それを守りたいと思うことはごく自然なことだ。彼が歌うように話してくれた物語は、今でもずっと私の中で息をし続けている。(平和教育ファシリテーター=広島市)
(2025年5月30日朝刊掲載)