緑地帯 黒住(國本)奏 平和を学ぶ旅⑥
25年6月5日
私が暮らしたコスタリカのコロンは、カラフルな花が咲き乱れ、さまざまな鳥の声が幾重にも響き渡り、大きな木々に見守られた小さな田舎町だ。犬や猫や鶏が、道端でのんびりしていて、どこか懐かしいぬくもりに包まれている。この町に暮らす人々は皆とても優しい。いつも気にかけてくれる大家さん一家。夕食に招いてくれて、会うたびに優しい言葉をくれるお隣のおばあちゃん。通りすがりに笑顔であいさつをしてくれるご近所さんたち。
ある日、公園で息子が遊んでいたら、いつもあいさつをしてくれる掃除のおじさんが「やあ、かわいいねえ。何歳だい?」と話しかけてくれた。スペイン語があまり分からないなりにも、会話のキャッチボールはできる。彼の名前はフレディさん。この仕事を22年やっていて、広東料理が好きで、2人のお子さんがいるそうだ。そんなフレディさんが去る時、3歳の息子がすかさず「バイ! グラシアス!(ありがとう)」と言い、驚く私と夫と、うれしそうなフレディさん。
スーパーに行った時に、レジの人に「グラシアス!」。タクシーを降りる時に、運転手さんに「グラシアス!」。みんな、「コングスト!(喜びとともに)」とにっこり笑顔で返してくれる。「グラシアス」。これが、この優しい町で、私の息子が最初に言えるようになった、一番大切なスペイン語だ。笑顔と温かい言葉。それこそが平和の源泉だと感じた。(平和教育ファシリテーター=広島市)
(2025年6月5日朝刊掲載)
ある日、公園で息子が遊んでいたら、いつもあいさつをしてくれる掃除のおじさんが「やあ、かわいいねえ。何歳だい?」と話しかけてくれた。スペイン語があまり分からないなりにも、会話のキャッチボールはできる。彼の名前はフレディさん。この仕事を22年やっていて、広東料理が好きで、2人のお子さんがいるそうだ。そんなフレディさんが去る時、3歳の息子がすかさず「バイ! グラシアス!(ありがとう)」と言い、驚く私と夫と、うれしそうなフレディさん。
スーパーに行った時に、レジの人に「グラシアス!」。タクシーを降りる時に、運転手さんに「グラシアス!」。みんな、「コングスト!(喜びとともに)」とにっこり笑顔で返してくれる。「グラシアス」。これが、この優しい町で、私の息子が最初に言えるようになった、一番大切なスペイン語だ。笑顔と温かい言葉。それこそが平和の源泉だと感じた。(平和教育ファシリテーター=広島市)
(2025年6月5日朝刊掲載)