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[被爆80年] 広島に元首級 続々訪問 万博契機4人 市「記憶にない頻度」

世界へ平和発信 好機

 大阪・関西万博に合わせ、国王や大統領たち海外の要人が相次いで広島市を訪れている。「記憶にないほどの頻度」と市の担当課。万博は10月まで続き、被爆80年に惨禍の実態と平和の尊さを世界へ広げる機会が増えそうだ。(新山創)

 市国際化推進課によると、4月13日に万博が開幕後、元首級4人を平和記念公園(中区)に迎えた。25日のデンマーク国王に始まり、5月20~28日にはパラグアイ、ハンガリー、アイスランドの各大統領。それぞれ万博で1日ずつ参加国・地域の文化を紹介する「ナショナルデー」に合わせて来日し、広島訪問を希望したという。

 デンマーク以外の3カ国は、いずれも現職大統領として初の広島訪問だ。原爆慰霊碑に献花し、原爆資料館を見学。パラグアイのペニャ大統領は持参した折り鶴を原爆の子の像にささげた。アイスランドのトーマスドッティル大統領は報道各社の取材に「広島の記憶は世界が、皆が、見なければならない。世界中の人々が広島に来るべきだ」と言葉を残した。

 海外からの元首・首脳級の来訪は、2023年度の17人が過去最多。5月19~21日にあった先進7カ国首脳会議(G7サミット)とその拡大会合の時に集中した。ただ、本年度も例年にない「頻度」といえる。

 国際化推進課は、広島県警と連携した警備の調整など訪問準備に追われる。野坂正紀課長は「確かに忙しいが、市が取り組む『迎える平和』を実現できる。うれしい悲鳴」と話す。大阪からの近さに加え、G7サミットや昨年の日本被団協のノーベル平和賞受賞も動機につながっているとみる。

 万博を契機とした首脳たちの来訪に、松井一実市長は5月27日の記者会見で「核兵器のない平和な世界を願う気持ちは尊いと言ってもらえる」と歓迎した。自身が会長を務める平和首長会議への加盟協力も要請でき「非常にありがたい」。各国の駐日大使たちが面会に訪れた際には、万博に合わせた首脳の広島訪問を呼びかけているという。

 万博会期中にナショナルデーはほぼ毎日ある。ロシアの侵攻を受けるウクライナや、核兵器保有国の米国とフランス、中国、インド、パキスタンも予定されている。

(2025年6月7日朝刊掲載)

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