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ドイツ人捕虜 工芸展の写真 in 1919 現原爆ドームで開催 展示物や会場内

広経大教授が13枚確認

 広島県物産陳列館(現在の原爆ドーム)で1919年に開かれたドイツ人捕虜たちによる工芸品展覧会。広島経済大の竹林栄治教授(日独交流史)が展示物や会場の写真13枚を入手して当時の出品目録などと照らし合わせ、展覧会に並んだものと確認した。研究者によると、陳列館の内部を捉えた写真は「珍しい」という。(馬上稔子)

 13枚のうちの1枚は、捕虜のカール・ペッターさんが出展した井戸の模型とみられる。捕虜収容所があった似島(南区)でドイツ語の通訳をした青木銑三郎さんが記録、保管していたアルバムの中にあった。模型の手前に「245」と書かれた札があり、展覧会の出品目録と合致するという。

 その他の12枚は、徳島県にあったドイツ捕虜収容所の史料を展示する鳴門市ドイツ館(同県)から提供を受けた。陳列館に掲示されたとみられるポスターや、蒸気機関や飛行機の模型といった展示物が写っている。

 展覧会は19年3月にあり、捕虜が作った美術・工芸品、飲食物など323品目が出品された。捕虜だった菓子職人カール・ユーハイムが日本で初めてバウムクーヘンを紹介したとされる。

 「展覧会はドイツの技術が伝わった機会でもあった」と、ドイツ人捕虜収容所に詳しい高知大の瀬戸武彦名誉教授。「これまで会場の様子を伝える史料は少なく、より鮮明に分かる貴重な写真だ」と話す。原爆関連資料に詳しい菊楽忍さん(66)=南区=も「陳列館の内部の写真は外観写真に比べて少なく、珍しい」と話す。

 竹林教授は「戦争に人生を翻弄(ほんろう)された捕虜と、市民との交流の息遣いが伝わってくる」と話している。

(2025年6月11日朝刊掲載)

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