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社説・コラム

天風録 『戦争と平和』

 〈せんそうをしない〉〈ばくだんなんかおとさない〉。浜田桂子さんの絵本「へいわってどんなこと?」は題名の答えが並ぶ。やがて〈おもいっきりあそべる〉〈あさまでぐっすりねむれる〉と、当たり前の日常へ▲イメージしにくい「平和」を子どもに分かるよう具体的に表現したという。では「戦争」ってどんなこと? 戦後80年の私たちに無関係だといえるだろうか。きのう広島市中区で始まった報道写真展「戦争と平和」の会場で、そんな思索に誘われた▲本紙紙面や写真パネルが被爆80年の歩みを伝える。続いて迫ってくるのは、通信社が太平洋戦争前夜からの歴史的瞬間を捉えた107枚。盧溝橋事件や真珠湾攻撃、学徒出陣や銃後の軍事教練…。戦争一色に染まっていくさまが切り取られる▲米軍による空襲や原爆投下、そして敗戦。物言わぬ報道写真が伝えるのは無謀な戦争と行き着く果てだ。さらに自国の戦争が終われば平和なのかと問うてくる。朝鮮半島やベトナムは戦場に。米国との同盟で間接的に支えた戦後日本もあらわにする▲今も戦火が絶えない世界。平和ってどんなこと? 自問しながら、歴史の一ページに生きる者として責任をかみしめる。

(2025年6月13日朝刊掲載)

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