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原爆の惨禍 漫才で伝承 コンビの「アップダウン」 広島で初披露

笑いと奪われた「あの日」 対比

 お笑いを通じて原爆の惨禍を伝える―。一見すると矛盾するようなテーマに挑んでいる漫才コンビがいる。北海道を拠点に活動する「アップダウン」だ。長崎の被爆2世の団体の依頼を受けて2021年から手がけ、今月上旬に初めて広島でも披露した。

 広島市中区の広島女学院中・高のホール。中学生約600人の前に、竹森巧さん(47)と阿部浩貴さん(48)が現れた。約1時間の舞台の前半は戦時中のエピソードなどを面白おかしくかけ合い、爆笑の渦に包まれた。一転して、長崎原爆の惨状を伝える後半はシリアスな場面が続く。家族を失った11歳の少年が悲しみに暮れるシーンでは、すすり泣く声も聞かれた。

 芸人が関わっていい題材なのかという葛藤もあったが、阿部さんは「笑いがあるから、笑いを奪った原爆という対比を表せる」と狙いを語る。見終えた3年広幡咲弥さん(15)は「原爆の漫才と聞いた時は笑っていいのかと思ったが、学びやすかった」と受け止めた。

 アップダウンは1996年結成。元吉本興業所属で、漫才コンクール「M―1グランプリ」の準決勝に4度進出した経験もある。18年から北海道の近代史や特攻隊を題材にした音楽劇なども制作してきた。

 広島での漫才を終え、阿部さんは「ここも爆心地に近かったと聞き、舞台上で特別胸が痛かった」と涙ぐんだ。広島原爆をテーマにした漫才について、竹森さんは「これから調べてみたい」と話していた。

 8月17日には呉市である平和関連のイベントの一環で、2人が特攻隊員を演じる音楽劇「桜の下で君と」が新日本造機ホールである。抽選で入場無料。(桧山菜摘)

(2025年6月16日朝刊掲載)

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