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核兵器廃絶運動 若者が新風 社団法人「なくすキャンペーン」発足1年 SNS駆使 2年目は政策提言に力

 核兵器禁止条約への加盟を日本政府に求める一般社団法人「核兵器をなくす日本キャンペーン」(東京)が発足して1年を迎えた。交流サイト(SNS)や動画配信などを駆使し、多くの若者が加わる活動が特徴で、核兵器廃絶運動に新風を吹かせている。

 都内で1日あった発足1年の集会に約100人が訪れ、国会議員の討論会や、識者を招いた国際フォーラムなどの活動を動画で振り返った。法人で唯一の専従職員、浅野英男さん(28)は「核兵器のない世界を具体的、現実的に構築する活動を目指したい」と意気込んだ。

 反核運動は高齢化が進んでおり、法人は若者へのアプローチを徹底する。1日の集会はリアルタイムで写真をSNSに投稿。米国であった核拡散防止条約(NPT)や核兵器禁止条約の会議では、現地から難しい議論をかみ砕いて伝える生中継を続けた。

 10人を超える学生たちがインターンシップ(就業体験)などで加わる。浅野さんは「核問題は自分たちが生きる未来の問題。若い世代が当事者として参加できるように意識している」と話す。

 2年目は政府への政策提言に力を入れる。1日の集会で法人のマニフェストを発表。足元の東アジアで核兵器使用の危険性が高まっているため、地域の非核政策を主導するよう求める方針を盛り込んだ。専門家の学術アドバイザーグループを新設し、助言を受ける。

 活動は当初から被爆85年の2030年までと区切り、禁止条約加盟を目指すと掲げてきた。今年3月の第3回締約国会議へのオブザーバー参加を訴えたが、実らなかった。専務理事で、非政府組織(NGO)ピースボートの川崎哲(あきら)共同代表(56)は「大きな議論にするところまではもっていけたが、もっと深めたい」と強調。国会議員や政府、専門家、市民の対話を進める役割を描く。(宮野史康)

核兵器をなくす日本キャンペーン
 2024年4月、日本被団協や非政府組織(NGO)でつくる核兵器廃絶日本NGO連絡会を母体に発足した。政府に核兵器禁止条約の署名、批准を働きかける。初年度予算は1500万円ほどで、多くは寄付で賄う。専従職員は1人で、約30人がボランティアで協力する。

(2025年6月15日朝刊掲載)

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