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[ヒロシマドキュメント 被爆80年] 2025年6月 亡き先輩思い 続く記帳

 2025年6月。広島市で、この夏の原爆死没者名簿の記帳が始まった。原爆の日の平和記念式典で原爆慰霊碑に納めるため、昨年8月6日以降に死亡が確認されるなどした被爆者の名前が書き加えられる。

 名簿の作成は、市が1951年に遺族たちから情報を募って開始。慰霊碑が建立された52年の式典で5万7902人の死没者を記した15冊を奉納した。24年8月5日までに広島原爆の34万4306人(127冊)と、遺族が望んだ長崎原爆の13人(1冊)が書き入れられた。「氏名不詳者多数」と記す1冊もある。

 今夏の記帳は、市が依頼した被爆者2人が2日に市役所で始めた。井口保育園長だった01年から続ける中本信子さん(82)=南区=は、初めて担当する大川純子さん(83)=同=と共に名簿に手を合わせた後、筆を握った。「尊敬する先輩」に思いをはせながら、この日に臨んだ。

 1学年上で、92年から毎年記帳を担った被爆者の池亀和子さん。昨年の初日の6月3日に顔を合わせたが、やつれたように見え、「胃がんで10キロほど痩せたんよ」と明かされた。中本さんも60代で胃がんを患っており心配すると、本人は「もう大丈夫」。「また元気に会いましょう」と言葉を交わして別れた2カ月半後、82歳で帰らぬ人になった。(山下美波)

(2025年6月17日朝刊掲載)

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